女性社員が着替えるロッカールームに“防犯カメラ”を設置「私物の遺失や盗難を確認するため」IT企業の呆れた言い分

「角度的に映らない」はずが…

見られていることが前提になったためか、制服を脱いでも下着姿にならずに済むよう、ブラウスの下にTシャツのようなものを着たり、ストッキングの上にいわゆる「見せパン」を履くようになったというが、それでも「着替え」という行為を監視されているのは不快でしかない。

そんなある日、とんでもないことが発覚する。

「女性課長が、社長室でたまたまモニターを見てしまったんですが、そこにはパーテーションの中が上から映っていたそうなんです。最初にパーテーションを設置した時は『角度的に映らない』という話だったのに、結局だまされていたんですよ」

当然のことながら、この一件は大問題となり、報告を受けた顧問弁護士が会社に駆けつけるまでに発展。しかし、あくまで「防犯のため」と主張する会社側がカメラの撤去を認めず、パーテーションの上にシーツのようなものをかぶせて、どこからも見えないような対策を取ったという。

だが、女性社員らの怒りは収まらない。

「すでに撮影されていたものを誰がいつ見たか分からないままですし、もしかしたら保存されてる可能性もあります。パーテーションの中では安心して下着姿になっていましたし『これからデートだから』と勝負下着に着替えていた人もいました。ロッカールームでは私語も交わしますから、万が一、音声も録られていたら、それもプライバシーの侵害ですよね。中にはショックで出社できなくなる人もいました」

こうした不安に対し、会社側は「社の方針に不満があるなら辞めてもらってかまわない」という強硬な態度だったため、ほとんどの女性社員は泣き寝入りするしかなかったという。

「私もその1人です。ただ、さすがに辞めるという選択肢はないですね。これからは大丈夫なんだから…と自分に言い聞かせています」

コンプライアンス遵守が叫ばれる昨今、時代の先端を行くIT企業がこの意識とは呆れてモノが言えない。

取材・文/清水芽々

清水芽々(しみず・めめ)

1965年生まれ。埼玉県出身。埼玉大学卒。17歳の時に「女子高生ライター」として執筆活動を始める。現在は「ノンフィクションライター」として、主に男女関係や家族間のトラブル、女性が抱える闇、高齢者問題などと向き合っている。「壮絶ルポ 狙われるシングルマザー」(週刊文春に掲載)など、多くのメディアに寄稿。著書に『有名進学塾もない片田舎で子どもを東大生に育てた母親のシンプルな日常』など。一男三女の母。