社員旅行で“混浴”強要…多様性をはき違えた男性社長の「セクハラ地獄」を30代女性社員が証言

宴会場でも女性社員は「お通夜状態」

後で聞いた話では、社長が別府温泉かなんかでLGBTを混浴させるイベントのニュースをネットで見て影響されたそうだが、社員旅行の参加者は40名弱で、そのうち女性社員は8名のみ。

多勢に無勢ではないが「決まったことだから」という有無を言わせない雰囲気もあり、女性社員は困惑しながらも受け入れるしかなかったという。

「総務部長も『イヤなら自力で帰りなさい』とか言うんですよ。でも宿の人に聞いたら、女性は『湯浴み着(ゆあみぎ)』というバスタオルのようなモノを着ても良いというので仕方なく入ることにしたんです」

一瞬ホッとしたものの、実際に着用すると、この湯浴み着というのは薄い不織布のようなものでできており、濡れると肌に張り付くため肌の色やボディラインが丸分かりになったという。

「裸を見られているようなものでした。男性は腰にタオルを巻いてる人もいましたけど、ほとんど丸見えで目のやり場に困るし、遠慮なしにこっちをジロジロ見ている人もいて、セクハラ地獄…いや、性加害を受けてるようなものでした」

あゆみさんたちは、ろくに身体も洗えないまま入浴を終え、その後の宴会に参加するしかなかった。

「男性社員はニヤニヤして盛り上がってましたが、対照的にこっちはお通夜状態ですよ。うちの会社は男女平等をうたっているので宴会の時にお酌したり、カラオケでデュエットを強要されるようなこともなく、いつもは和気あいあいと飲むんですが、さすがにこの時ばかりは、女性社員らはみんな隅っこに固まって黙々と箸を動かしていました」

この悪夢のような混浴社員旅行は昨年も行われ、女性社員はバスタオルを巻いての入浴が許可されたそうだが、タオルも巻かない男性社員と同じ湯舟に入浴させられるという性加害ぶりは相変わらず。

「旅行の不参加者が出ないようにということなのか、去年から『慰労手当』という名目で、旅行に参加すると女性のみ2万円の手当がつくようになりました。何もないよりはマシですけど、逆にお金で言うことを聞かされてるようですっきりしません」

この社員旅行は今年の秋も予定されているというが、「生理だってことにしようか、とか話したんですけど、それを申告するのもイヤだし、まさか全員で不参加というわけにも行かないし…」とあゆみさんをはじめ、女性社員全員が今から頭を抱えているという。

取材・文/清水芽々

清水芽々(しみず・めめ)

1965年生まれ。埼玉県出身。埼玉大学卒。17歳の時に「女子高生ライター」として執筆活動を始める。現在は「ノンフィクションライター」として、主に男女関係や家族間のトラブル、女性が抱える闇、高齢者問題などと向き合っている。「壮絶ルポ 狙われるシングルマザー」(週刊文春に掲載)など、多くのメディアに寄稿。著書に『有名進学塾もない片田舎で子どもを東大生に育てた母親のシンプルな日常』など。一男三女の母。