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『ファーザー』/5月14日(金)より全国公開~LiLiCo☆肉食シネマ

『ファーザー』/5月14日(金)より全国公開~LiLiCo☆肉食シネマ
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『ファーザー』
監督/フロリアン・ゼレール
出演/アンソニー・ホプキンス、オリヴィア・コールマン、マーク・ゲイティス、イモージェン・プーツ、ルーファス・シーウェル、オリヴィア・ウィリアムズ
配給/ショウゲート

お仕事、お疲れ様です。今回、ご紹介する作品は、4月に行われた米アカデミー賞で主演男優賞を受賞した『ファーザー』です。受賞結果に関して正直に言わせてもらうと…思った通りです。たくさんの映画関係者は〝意外!〟と騒いでいましたが、私は驚くことなく冷静に受賞結果を飲み込むことができました。

『ファーザー』の主演、アンソニー・ホプキンスの役の名は同じアンソニーで、認知症を患うお父さん。娘が一生懸命に面倒を見ますが、ある日、新しい恋人とイギリスからパリに引っ越すことをお父さんに告げます。嫌だと言っていたお父さんでしたが、そこから、この映画は不思議な展開を見せていきます。例えば、娘が帰って来ると別の人だったり、見知らぬ男性がリビングに座っていて「誰だ?」とお父さんが聞いても「ここに住んでる」と答えたり…。それが、あまりにもリアルに登場人物と出来事がうまく絡み合ってるので、途中で〝もしや、私の記憶が間違ってる?〟とすら思ってしまうほど。

でも、この物語を通して認知症の感じ方を伝えたかったことは痛いほど伝わって来ます。それをホプキンスが素晴らしく演じています。分からなくなってしまった時の迷いと混乱、なんとか周りを安心させるため陽気に振る舞う態度、表情を読み取りながらの周囲の人への接し方、もはや、見守ることしかできません。そして、あのラスト…。

アンソニーの“目の表現”がスゴい!

私のおばあちゃんは亡くなる前に寝たきりでしたが、とてもしっかりしていました。でも、家族以外で認知症を患った人がいて、しばらく面倒をみてましたが、突然覚えてくれなくなったり、怒鳴られたり、事故につながりそうな行動を取ったりして、本当に大変でした。本人ももちろんですが、周りの家族や友人の接し方も気を遣いますね。

今回の役柄にホプキンスは、演じるのがあまり難しくなかったと仰っていました。さすがです! 個人的には、陽気に振る舞っている時に、目だけは他のことを企んでいる様子を見事に表現してるのがすごい。どこかで、みんなが自分を騙そうとしてると思っているからこその、あの目。でもアンソニーは、次第に自分をも疑ってしまうようになり、最後は切なかったです。

このテーマで、ここまでの作品に仕上げたのはすごい。アンソニーを見ながら、私はずっと自分のお父さんのことを想像しました。きっと、みんなもそうなると思います。

LiLiCo
映画コメンテーター。ストックホルム出身、スウェーデン人の父と日本人の母を持つ。18歳で来日、1989年から芸能活動をスタート。TBS『王様のブランチ』、CX『ノンストップ』などにレギュラー出演。ほかにもラジオ、トークショー、声優などマルチに活躍中。