“トクリュウ”撲滅に警察庁が本腰も「姿が見えない犯罪集団」にどう立ち向かうのか

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数年前から、緩やかな結びつきで離合集散を繰り返す犯罪集団が出現。こうした輩によるSNSを通じた闇バイトなどが急増したため、警察庁は昨年7月にこれを「匿名・流動型犯罪グループ」(略称・トクリュウ)と定義した。

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「彼らは、暴力団や準暴力団(半グレ)のような組織を持たず、仕事(犯罪)のたびにメンバーを集めている。従来型の反社会的勢力とも繋がってはいるが、実態が掴めない」(裏社会事情に詳しいジャーナリスト)

警察庁も、トクリュウやそのメンバーの数は「捉えきれない」と説明している。

「昨年末までの3年間で、特殊詐欺は6170人、密売など営利目的の薬物事件は2292人、身分証偽造など犯罪インフラ事件では1721人(いずれも暴力団を除く)が摘発されています。これらの摘発人数が、トクリュウの勢力を示す目安と警察庁はみている」(同)

ちなみに、今年4〜6月までの詐欺や窃盗など、主な「資金獲得型犯罪」によるトクリュウの摘発は計824人だという。

人違いで一般人を襲う事件も

7月26日に公表した『2024年版警察白書』の中でもトクリュウの特集を組み、改めて対策を強化する方針を示した。

「警察庁は、昨年夏からトクリュウの撲滅に乗り出していますが、SNS型の投資詐欺やロマンス詐欺などの犯罪は減らず、増加の一途をたどっています。そこで、今年度からは暴力団対策と同様、事件がトクリュウによるものかどうかを都道府県警が認定する仕組みを導入。トクリュウ捜査のため、刑事や生活安全などの部署を横断した専従体制も全国に新設したのです」(全国紙社会部記者)

警察当局は「姿が見えない集団」をなんとか炙り出そうとしているが、トクリュウならではの事件も発生。現場の捜査員たちを困らせている。

「昨年9月、“薬物密売人狩り”と称して地方公務員に暴行を加えたとして、兵庫県警が建設業の男と少年ら16人を強盗致傷の疑いで逮捕した。ところが、これは完全な人違いでした。被害者の地方公務員は薬物密売とは無関係の善良な市民だったのです」(前出・ジャーナリスト)

地方公務員は、加害者グループとの接点が一切ないにもかかわらず、首を絞められるなどの暴行を受けて、一時意識不明に陥る重傷を負わされた。

「トクリュウはメンバー同士の関係性が希薄なため、ターゲットの伝達が完全ではないケースもある。こうした人違いの事件も今後は頻繁に起こる危険性があり、いつ自分が巻き添えになるか分からないという不安感を一般市民にも与えました」(同)

トクリュウの取り締まりは待ったなしだ。