「新NISAを始めた国民は悪夢をみる」森永卓郎が“令和のブラックマンデー”前に予想していた未来

森永卓郎 (C)週刊実話Web
7月26日、日経平均株価が前日比202円安の3万7667円と8日連続の下落となった。

7月11日の最高値4万2224円と比べると11%の下落だ。

これがバブル崩壊の入り口かどうか断定はできないが、仮にそうだとすると、今回の株価下落は、まだ序盤戦と考えるべきだ。

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1929年9月3日に386ドルだったニューヨークダウは、1932年7月8日に40.6ドルまで値下がりした。下落率は89%だ。

1989年の大納会で3万8915円をつけた日経平均株価は、2008年10月28日に6995円まで値下がりした。下落率は82%だ。

つまり、大きなバブル崩壊のときは、80%を超える株価下落が生じているのに対して、今回は11%というわずかな値下がりにすぎないのだ。

今回の株価下落の最大の原因は、急速に円高が進んだことだ。

1ドル=152円と、わずか10日間で10円も進んだ円高は、まだ調整途上だ。

経済モデルの計算だと、均衡為替レートは1ドル=110円だし、IMFが今年の世界経済見通しで明らかにした購買力平価は、1ドル=91円だ。

つまり為替が本来の姿に戻るまで、あと40円から60円ほどの円高が必要になる。

今回10円の円高で4000円株価が下がったことを考えると、今後の日経平均株価は、1万6000円から2万4000円も下がる計算だ。

つまり、為替レートが正常化するだけで、日経平均は最悪1万4000円まで下がる可能性があるのだ。

さらにバブル崩壊時は、資産価格がオーバーシュートして下がることも多いので、日経平均1万円割れも視野に入ってくる。

そうなったら、「貯蓄から投資へ」という政府の掛け声に乗せられて新NISAを始めた国民は、悪夢をみることになる。

今ならまだ間に合う投資撤退

株は、買うよりも売る方がはるかに難しい。

特に上げ相場のときはそうだ。最高値更新という蜜の味を脳が覚えてしまっているからだ。

実は、私は7月12日に生前整理とがんの治療費確保のため、株主優待目的のものを除いてすべての株式や投資信託を処分した。

バブル崩壊を予測したからではなく、資金確保のために偶然そのタイミングになっただけだ。

ただ、結果的に株高と円安のピークで処分することになったため、数千万円の大金が転がり込んできた。

その大金は、毎月100万円以上かかっているがんの治療費に消えていくのだが、がん告知をされていなかったら、完全売却という決断はできなかったと思う。

ただ、多くの経済評論家が、「日経平均は企業利益との比較でみれば割高とは言えない」と、株価再上昇への期待を唱えている。

しかし、株価の比較対象となっている利益そのものが、いまバブルを起こしている。前回の日経平均のバブル最高潮に達していた1989年にも、「Qレシオ」いうバブルを正当化する指標が盛んに用いられ、株価は上がり続けると学者や評論家は口を揃えていた。

このまま日経平均がストレートにバブル崩壊に進むかどうかは分からないが、今回私が手にした大金は、最後まで株を持ち続けた人が払う羽目になる。

株式市場では昔から「最高値で売り抜けることは神様でもできない」といわれてきた。

だから老後の生活資金を確保するため、高値圏が続くいまこそ、投資から全面的に手を引くチャンスだと考えるべきではないだろうか。