蝶野正洋が朝倉未来&阿部詩への思いを吐露「プロモーター的な才能がある」「彼女が背負っていたプレッシャーは計り知れない」

蝶野正洋 (C)週刊実話Web
格闘技イベント『超RIZIN.3』が7月28日に行われ、メインイベントで朝倉未来選手が平本蓮選手にKO負けを喫した。

未来選手は試合前から「負けたら引退」を公言していて、敗戦後にSNSで《自分が戦うのは一旦終わりにします》と引退を示唆した。

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未来選手は格闘家としての実績も十分だが、ユーチューバーや格闘技大会『BreakingDown(ブレイキングダウン)』の仕掛け人としても大成功している。

だから、すでに選手として試合を続けるためのハングリーさがなくなっていたというのもあるのかもしれない。

そもそも格闘家に限らず、アスリートというのは選手生命が短い。

だからこそ、現役のときから他に稼ぐ手段を見つけておくべきで、自分でビジネスをやろうとしたときには、やっぱり知名度が重要になってくる。

ブレイキングダウンに出場している選手は腕自慢の不良連中ばかりで、競技としてのレベルは低いかもしれない。

だけど、出場したことで一気に知名度が上がるため、いまやブレイキングダウンに出演することが一つのステータスになっている。

未来選手は、そういうプロモーター的な才能があるんだから、これから新たな興行の形をつくって、格闘技業界を盛り上げていってほしいよね。

ただ、世の中というのはシビアだからね。引退した途端、あからさまに世間の注目度が下がり、ファンはもちろん業界関係者、マスコミ、スポンサーなんかも離れていく。

選手側は、自分という人間にファンが付いていると思うんだけど、あくまでも現役のトップ選手ということで関心を持ってくれているだけで、その立場ではなくなった瞬間から、本当に潮が引くように人がいなくなるんだよ。

勝ち負けだけではないプレッシャー

俺もベルトを落としたりケガで休んでいるときに、こんなに世間の反応が違うんだなと感じたことがある。

プロレスにおけるチャンピオンというのは目まぐるしく変わるものだから、それほど影響がないと思いがちなんだけど、一歩外に出ると、ベルトを持ってるか否かで、世の中の評価が天と地ほど違う。

2番手の選手なんて、誰も追いかけないんだよ。

 これはアマチュアの世界でも変わらない。

パリ五輪が開幕して、各種目で熱戦が繰り広げられているけど、彼らも4年に1度のこのチャンスにメダルを取るかどうかで、その後のキャリアが大きく変わる。

だからこそ、純粋な試合の勝ち負けだけではないプレッシャーがのしかかってきてしまう。

7月28日に行われた柔道で、メダル確実といわれていた阿部詩選手が、2回戦でまさかの一本負けしてしまった。

号泣して悔しがる姿には心を打たれたけど、彼女が背負っていたプレッシャーというのは計り知れない。

オリンピック中継で柔道のバックステージ映像が流れたけど、大部屋で待機していて、試合に対して集中力を高めるのが大変そうだった。

いつもと違う環境で、しかもぶっつけ本番で結果を出すというのは、こちらの予想以上に大変なことだと思う。

メディアはメダリストだけに注目しがちだけど、負けた選手にもスポットを当てて、その後のキャリアのためになるような報道をしてほしいね。

蝶野正洋(ちょうの・まさひろ)

1963年シアトル生まれ。1984年に新日本プロレスに入団。トップレスラーとして活躍し、2010年に退団。現在はリング以外にもテレビ、イベントなど、多方面で活躍。