照ノ富士が見せた「横綱のプライド」満身創痍で限界説もささやかれた男の復活劇を支えた信念とは

両国国技館 (C)週刊実話Web
ドルフィンズアリーナで行われる最後の場所となった名古屋場所は、7月28日に横綱照ノ富士(32)が平幕の隆の勝(29)を優勝決定戦で破り、3場所ぶり、2ケタ、10回目の優勝を飾った。

ここ2場所、まだ大銀杏も結えない“チョンマゲ力士”が相次いで優勝し、世代交代が叫ばれていた大相撲界。ようやく番付最上位者の意地を示すことができた照ノ富士は、こう胸を張った。

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「(最後までもつれる展開は)何回もこういう状況で相撲を取ってきている。今できることをやっただけ。それが(優勝という)結果につながって良かった」

ただ、今場所はある意味、見切り発車の出場だった。

春場所、夏場所とひざや腰の負傷で途中休場を繰り返し、休場回数は横綱在位場所の半分以上の10回目。限界説までささやかれ、先場所後の横審では「(今後の身の振り方を)判断するのは照ノ富士自身です」と最後通牒まで突き付けられていた。

稽古不足からくるスタミナ切れ

出場するからには、誰もが認める結果を出さなくてはならない。

初日の3日前に、やっと出場を認めた師匠の伊勢ケ浜親方(元横綱旭富士)は、「最後までしっかり取って、優勝を目指してやってもらいたい」と注文をつけたが、「稽古量が少し足りない」と不安も口にしていた。

ところが、いざ場所が始まると、いきなり初日から10連勝。それも圧勝、完勝のオンパレードで、6日目には後続との差が2に開き、15日制になって初めての12日目優勝も現実味を帯びた。

しかし、終盤になると急ブレーキ。最後の5日間は2勝3敗と、稽古不足からくるスタミナ切れを起こし、気力を振り絞って隆の勝の猛追撃を退けた。

この優勝で照ノ富士が窮地を脱したのは確かだ。優勝インタビューで来場所のことを聞かれると、こう答えた。

「入門して14年間、毎日、目指してきた相撲が、ちょっと完成してきたかな、という実感がある。それを鍛えていく」

次なる目標についても、「11回目(の優勝)でしょう」と笑顔で宣言。まだしばらく、照ノ富士の天下は安泰のようだ。