「340分の最後まで目が離せなくなるはず」約50年前の大事件を描いた映画『夜の外側 イタリアを震撼させた55日間』【やくみつるのシネマ小言主義 第260回】
1959年生まれの自分はすでに大学生だったはずですが、全く知りませんでした。
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多くの読者もまたご存知ないのでは?
で、知らないのは幸いです。ヨーロッパ在住の方なら誰もが知るこの事件の結末を知らないからこそ、340分の最後まで「どうなっちゃうの?」と目が離せなくなるはず。
5時間を超える超大作と聞くと引くかもしれませんが、巧みに工夫されていますのでご安心を。6編に章立てされていて、政府、バチカンの教皇、警察、妻、テロリストなど、さまざまな立場の視点を交えて、事件の「外側」の人間ドラマが描かれるので飽きさせません。
大河ドラマの6編を一気見している感覚といえばいいでしょうか。
1つの事件をさまざまな角度から描くという表現スタイルが何かに似ているなと思ったのですが、横山秀夫の警察推理小説でした。
そう考えると、ぐっと親しみやすく感じられました。
1978年とは思えないほど現代的?
にしても、84歳のマルコ・ベロッキオ監督がここまで緻密な脚本を描き切る頭脳の持ち主なのにも驚きます。バイデン米大統領より3歳上ですからね。
絵作りにも一切妥協なし。時々、リアルな報道映像が挟み込まれているのですが、フィクションの映像があまりに完成度が高いので見分けがつかず、当時にタイムスリップして55日間をリアルで体験している錯覚に陥ります。
例えば、遠くに映る車でさえ70年代車でビシッと決めていて、よく集めたものだと感心しました。
事件当時から約50年を経て、戦争、暗殺未遂、政治の右傾化など世界中が再び不穏な空気に包まれています。
過去を反省し、平和でSDGsな世界へ進化していたはずが、本質は何も変わらず、この6編が現在進行形で続いているようなリアリティーを感じるところが素晴らしい。
さて、最終章で、テロリストと裏取引をしてでも解放をという訴えを政府に無視し続けられ、極限状態にあるアルド・モーロが「生きたいと願うことの、何が狂っていますか」と語ります。
自分もこの年齢になり、周辺で心ならずも死を迎える人が増えてきました。
自分も遠からずと達観する一方、これまで以上に「生きたい」と希求するように。逆に、生きたいと思わない方が緩やかな狂気じゃないかと、根源的な問いまで突きつけられました。
夜の外側 イタリアを震撼させた55日間
監督・原案・脚本:マルコ・ベロッキオ
出演:ファブリツィオ・ジフーニ、マルゲリータ・ブイ、トニ・セルヴィッロ、ファウスト・ルッソ・アレジ、ダニエーラ・マッラ
配給:ザジフィルムズ
8月9日(金)より全国順次ロードショー
1978年3月のある朝、長きにわたりイタリアの政権を握ってきた、キリスト教民主党の党首で元首相のアルド・モーロ元首相が、極左武装グループ「赤い旅団」に誘拐される。イタリアのみならず、世界を揺るがした55日間に及ぶ事件の真相を、モーロ本人や救出の陣頭指揮を執った内務大臣、モーロと親交の深かった教皇パウロ6世、赤い旅団のメンバー、モーロの妻、事件に関わった人物など、それぞれの視点から、史実とフィクションを織り交ぜて描き出す。
やくみつる
漫画家。新聞・雑誌に数多くの連載を持つ他、TV等のコメンテーターとしてもマルチに活躍。
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