森永卓郎に突然のがん宣告「正直信じられませんでした」治療法の選択からお金や死生観までつづった『がん闘病日記』

『がん闘病日記』森永卓郎
◆『がん闘病日記』三五館シンンャ/1500円

――がんを宣告されたとき、まず何を思いましたか?

森永「正直信じられませんでした。腫瘍マーカーは正常値だし、内視鏡でみても膵臓に病変がなかったからです。当初は『治療で何とかなる』と思っていたのですが、昨年末に打った抗がん剤が私に合わなくて死にかけたとき、初めてきちんと宣告が頭に入りました。
思考能力が低下する中で思ったのは、書きかけだった書籍を完成させたいという思いでした(後に『書いてはいけない』として刊行。24万部のベストセラーに)。その後、体調が戻り、2週間の入院中に考えたのは、私のラジオのリスナーのためにも生きなければということと、大学のゼミ生が独り立ちできるまで、少なくとも半年は生きたいと思うようになりました」

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――がんを公表した後には、さまざまな治療法のアドバイスが送られてきたそうですね。

森永「これまでメールで寄せられた治療法は1000件を超え、今でも毎日数件のアドバイスが来ています。対策はがん細胞を抑え込んだり、免疫細胞を活性化するといった『治療』と、身体全体を元気にする『健康法』に分かれます。
アドバイスはすべて検証してみましたが、サンプル数が少なく、科学的に効果が立証できないものがほとんどで、採用した対策はほとんどありません。継続的にやっているのはスーパー銭湯での温浴療法と、できるだけ歩くことで足の筋力を維持することの2つだけです」

書籍10冊が同時進行中の超多忙スケジュール

――これまでどれくらいの治療費がかかったのでしょうか。

 森永「初期の入院や血液パネル検査などの検査費用が300万円、今は月1回のオプジーボ(保険適用)が20万円強、月2回のNK療法(血液免疫療法、自由診療)が月間100万円弱かかっています。毎月、預金が100万円ずつ減っていく感じです。
これまで支払った医療費の総額は1000万円くらいです。ただ、生前整理で株式や投資信託をすべて処分したので、当分はそのお金で現在の治療を継続できます」

 ――今後の目標ややりたいことを教えて下さい。

森永「現在、書籍10冊が同時進行中です。大学の講義、レギュラー6本のラジオなど、休む間もないほど仕事のスケジュールが詰まっています。
ただ、最近分かったのは、『死にかけている人間を殺しに来る人はいない』ということで、今私は『言論界の治外法権』を手に入れています。残りの短い人生をフルスピードで走り、誰にも忖度せずに、真実を世の中に発信し続けようと考えています」

 (聞き手/程原ケン)

森永卓郎(もりなが・たくろう)

1957年、東京都生まれ。経済アナリスト、獨協大学経済学部教授。1980年、東京大学経済学部を卒業後、日本専売公社(現・JT)に入社。カルト化する財務省を描いた『ザイム真理教』がベストセラーに。続けざまに、四半世紀のメディア活動で見聞きした“3つのタブー”に斬り込んだ『書いてはいけない』が24万部のヒット。