蝶野正洋が伝説の一戦“猪木&坂口VS橋本&蝶野”を回顧「負けること考えるバカいるかよ!」「時は来た! それだけだ」発言誕生の裏側

蝶野正洋 (C)週刊実話Web
先日開催された『超・燃える闘魂アントニオ猪木展』で、トークショーをやらせてもらった。

1990年2月10日、新日本プロレス東京ドーム大会のメインで行われた「アントニオ猪木&坂口征二VS橋本真也&蝶野正洋タッグマッチ戦」の映像を流しながら、俺が解説するという趣向だ。

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この試合は俺たち闘魂三銃士世代が、猪木さんと坂口さんに挑むという世代闘争がテーマにあったんだけど、その前後にいろいろ起きすぎたことによって、後世まで語り草になっている。

まず試合前のインタビューで、「もし負けることがあると…」と聞かれた猪木さんが「出る前に負けること考えるバカいるかよ!」と言った後にアナウンサーをビンタして、その直後に俺たちの控室に中継が切り替わる。

この直前に橋本選手が「コメントは考えてきたから俺に任せてくれ」というようなことを言っていたから、俺は「潰すぞ今日はオラ! よく見とけオラ!」と短めに吠えた。 そしてカメラが寄ると橋本選手が「時は来た! それだけだ」と言った。

俺は「もう終わり?」と笑いそうになって必死にごまかしたんだけど、それも映像に残ってるんだよね。

俺は猪木さん、坂口さんと試合をするということで、すごく緊張していた。ゴング前に猪木さんが奇襲してきたんだけど、普通にかわしている。

いま思うとあそこは受けて、乱闘から始まったほうがよかったね。橋本選手も気合が入っていて、猪木さんのことをバッチバチに蹴っ飛ばしていた。

アントニオ猪木はやっぱりスーパースター!

今回の映像を見て思い出したけど、この試合はレフェリーがルー・テーズさんなんだよね。

俺はテーズさんの前でSTFを繰り出したりしたんだけど、最後は猪木さんの延髄斬りを喰らってスリーカウントを取られてしまった。

勝ち名乗りを受ける猪木さんは鼻血を出し、左目の下も腫れてしまっていてダメージが色濃かったが、よく見ると橋本選手は猪木さんの顔面を蹴ってない。

多分、俺が猪木さんを低空バックドロップで投げたとき、猪木さんの体が丸まって自分のヒザが顔面に入ったんじゃないかな。

まぁ、俺もテーズさんの前で“ヘソで投げるバックドロップ”をやってないというのも問題なんだけどね(笑)。

そしてクライマックスは試合後の「1、2、3、ダー!」。

今回のトークショーの会場にリングアナの田中ケロさんが来ていたので、その場で登壇してもらって当時の裏話を聞いたんだけど、ケロさんが帰りそうになる猪木さんに「ダー、お願いします」とマイクを渡して、史上初の「1、2、3、ダー!」が披露されることになったそうだ。

トークのあとはサイン会もあって、盛況のうちにイベントは終了した。

俺にも「蝶野展をやりませんか」という話がたまにくるんだけど、モノをちゃんと保管してないからできないんだよね。

ベルトは返上して手元にないし、コスチュームは捨ててないはずだけど、どこに仕舞ったか分からない。nWoのTシャツとか腐るほどあったはずだけど物置の奥底でカビてるんじゃないかな(笑)。

そう考えると、多くのレスラーはこのような展覧会を開催できない。

展示できるものが多く残っている猪木さんは、やっぱりスーパースターだと実感するよ。

蝶野正洋(ちょうの・まさひろ)

1963年シアトル生まれ。1984年に新日本プロレスに入団。トップレスラーとして活躍し、2010年に退団。現在はリング以外にもテレビ、イベントなど、多方面で活躍。『ガキの使い大晦日スペシャル』では欠かせない存在。