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シューマイの時代到来!? コロナ禍にも負けず専門店増加~企業経済深層レポート

企業経済深層レポート (C)週刊実話Web

現在、全国的にシューマイが熱い視線を浴びている。この1年ほどでシューマイ専門店が増加し、加えて冷凍シューマイも個人用、業務用ともに大きく売り上げを伸ばしているという。

フードアナリストが、このブームの背景を解説する。

「コロナ禍で外食産業が苦戦する中、確かにシューマイは異例の動きを見せている。その理由を推察すると、ヘルシー志向の高まり、コロナ対策のしやすさ、さらにはオリジナル商品が続々と開発されていることが挙げられます」

まず、ヘルシー志向について、外食産業では油を使う料理が多い中、シューマイは基本的に蒸す料理が中心。終わりが見えない巣ごもり生活を強いられ、消費者がシューマイの魅力を再確認したようなのだ。

コロナ対策については、店内飲食での3密を避けるため、テイクアウトに切り替えられる利便性がある。シューマイ専門店はテイクアウト可能なケースが多く、しかも、比較的低価格のため財布にも優しい。

また、シューマイはアレンジの幅が広く、専門店や食品会社などは新しい味の開発に余念がない。シューマイは餃子のようにニンニク、ニラを使わないため、食シーンを選ばないことが老若男女を問わない人気につながっている。

ところで、このコロナ禍にもかかわらず、どのようなシューマイ専門店が増えているのだろうか。

「東京・新橋にある『Tokyo焼売マニア』は、コロナが猛威を振るい始めた昨年2月のオープンだが、シューマイ好きのオーナーによるマニアックな味で人気を集めている。シューマイの餡は豚だけでなく、魚介類からジビエなどバリエーション豊富で、唐辛子を使用したり、サバ缶をアレンジしたり、変わり種も新しい客層を引き付けています」(フードライター)

冷凍食品も売り上げアップ

こうしたシューマイ居酒屋の草分けは、業務用食品卸売業を営む「クサマ」(東京都新宿区)が2015年に始めた「野田焼売店」だという。今年3月には埼玉県所沢市に、スピンアウトブランドとして「野田焼売店 辣痺(RABI)」をオープンした。

「同店は既存店の3本柱であるシューマイ、担々麺、麻婆豆腐をブラッシュアップしたメニュー構成で、辛さと痺れを堪能できる。ほかにも首都圏のシューマイ居酒屋では、昨年から続けて5店舗展開する『焼売のジョー』などが目立っています」(同)

東京だけではない。大阪でも新規のシューマイ専門店が増えている。

「懐かしの銭湯をイメージした『スタンド酒場 焼売銭湯』が話題を呼んでいます。同店は中華系のシューマイではなく、うす皮肉厚の鶏や豚のシューマイがメインです」(同)

西の福岡市では、今年3月に「焼売いしい」がオープンした。

「九州産の鶏肉を使用したあっさり味で、何個でも食べられると評判です」(同)

冷凍食品でもシューマイの売り上げ増が目覚ましい。食品メーカー関係者が言う。

「冷凍シューマイでトップシェアを誇る味の素冷凍食品(東京都中央区)では、16年発売の『ザ★シュウマイ』が肉主体のしっかりとした味わいで人気。20年8月以降、売り上げは前年比二桁以上の伸長が続いている。また、今年2月には新商品『大海老焼売』を投入。中年男性に人気の『ザ★シュウマイ』とは真逆のコンセプトで、女性や若者をどれだけ取り込めるか、注目の戦略商品だ」

“シューマイのまち”を目指す栃木県鹿沼市

マルハニチロ(東京都江東区)は、20年に3月に発売した『五目シュウマイ~香りと旨み~』が好調。家庭で味わえる本格中華がコンセプトで、俳優の横浜流星を起用した新CMに力を入れている。

中華専門店「大阪王将」の冷凍食品販売を担う「イートアンドフーズ」(東京都品川区)は、今年2月に「たれつき焼売」を発売し、こちらも大人気だという。

そして、シューマイといえば創業100年を超える老舗の崎陽軒(横浜市)だ。食品業界関係者が解説する。

「崎陽軒は発祥地の横浜駅など、首都圏の主要駅やターミナルビル、百貨店などに約150店を展開し、19年の年商は262億円を誇っていた。しかし、昨年はコロナ禍で売り上げが激減。強い危機感を持った同社は、3密が回避できる郊外ロードサイドに次々と出店し、巣ごもり客に猛アピールした」

結果、崎陽軒は売り上げを回復し、ブームに火をつけた格好だ。また、昨年発売の「チーズシウマイ」(崎陽軒はシウマイの表記)も大ヒットし、さらに台湾に進出するなど攻めの姿勢を見せている。

「崎陽軒の初代社長、野並茂吉氏の出身地である栃木県鹿沼市では、地元の商工会議所が〝シューマイのまち〟を目指し、JR鹿沼駅前に『シウマイの像』を建立する計画が進んでいます。同会議所では全国に〝餃子のまち〟として知られる宇都宮市同様、鹿沼市をシューマイでアピールしたいようです」(同)

コロナ禍にも打ち勝つシューマイの勢いは、今後もそう簡単には衰えそうもない。さらにブームが拡大しそうな気配だ。

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