やくみつる注目映画『フェラーリ』 クルマ好き&レース好き垂涎の映画「あのヌメヌメと濡れたようなフェラーリ・レッドに憧れていた方々の記憶の蓋を開け放つかもしれません」

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7月5日公開の映画『フェラーリ』は、1991年に原作『エンツォ・フェラーリ 跳ね馬の肖像』が出版された後、構想30年に及ぶ執念の企画だったらしいです。

確かに車好き、モータースポーツ好きにはタマらないであろう、あのF1の帝王フェラーリ創業者を描いた本作。しかも、破産寸前で私生活でも窮地に立たされていた1957年、激動の1年間を切り取っています。もちろん実話です。

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1950年代に行われていたイタリア全土1000マイル縦断の公道レース「ミッレミリア」の臨場感とスピード感、1億ドルもの値が付くオリジナルカーの再現を見事にやり遂げている様を見ると、「ああ、監督たち製作側はこれがやりたかったのよね」と言いたくなる。

本物さながらのレース会場と、金型も図案も残っていない中で、3Dスキャナーを駆使して作った1950年代のボディーを現代の車台に載せたマシーンが再現できれば…。

そして、新たに作った車以外は、フェラーリもベンツもマセラティもポルシェも、その年限定のオリジナルモデルを世界中のマニアから集めて撮影できさえすればいいんでしょう。

もし、自分が40歳〜60歳だったとしたら、星評価は全く違っていたと思います。

今よりずっと車好きでしたし、実際にドイツ車、アメリカ車、ドイツ車と乗り継いできましたから。

しかし、前期高齢者となった今、「何やっていたんだ」という思いしかありません。

現在の車は660㏄の軽自動車。その1台前の4000㏄から比べるととんでもないダウンサイジングですが、何の未練もないのが自分でも不思議です。

いいですよ、軽。ガソリンも少なくて済みますし。ぶつかると怖いとか懸念されますが、もう高速も乗りませんから。

子どものころの記憶がよみがえる?


そんな自分ですが、1960年代の終わり頃、ミニカーを集めていたんです。

4台買うとその月のお小遣いがなくなるので、子供ながらに色々と工夫しながら集めていましたね。

その中には「葉巻型」と言われたレーシングカーのミニカーも確かにありました。

後年、2、3台を残して手放してしまったんですが、十何年か前にネットオークションを使って全部集め直してみました。

届いた箱を開けたとき、子供の頃の感触、きれいな色に見とれた感覚がすべてよみがえってくるのには驚きました。

この映画も、あのヌメヌメと濡れたようなフェラーリ・レッドに憧れていた方々の記憶の蓋を開け放つかもしれませんね。

「週刊実話」2024年7月18日号より

やくみつる
漫画家。新聞・雑誌に数多くの連載を持つ他、TV等のコメンテーターとしてもマルチに活躍。