森永卓郎が警告!岸田総理“交代”だけでは不十分? 転落する日本経済を救うためのシナリオ

森永卓郎 (C)週刊実話Web

6月21日の会見で岸田総理が、物価高対策として今年8月から3カ月間、電気・ガス料金の負担軽減措置を実施すると発表した。

私は岸田総理が国会会期末で解散総選挙に打って出る可能性は残されていると考えていた。

しかし、党首討論で立憲民主党の泉代表が「国民に信を問いましょうよ」と挑発したにもかかわらず、岸田総理はぐっとこらえた。

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政治資金問題のゴタゴタで、党員や党所属の国会議員、執行部、そして麻生副総裁などの実力者までも敵に回して、四面楚歌の状況に陥った岸田総理に、もはや解散を強行できる力は残されていなかったのだろう。

 だが、権力継続に執念を燃やす岸田総理は、諦めていなかった。

勝負の舞台を総選挙から9月の自民党総裁選へと移したのだ。

総裁選勝利のための最大の戦略が、電気・ガスへの補助金復活だ。

そもそもこの補助金は、5月使用分(6月請求分)を最後に打ち切られた。

しかし、実質賃金が減少を続けるなかでの補助金カットは、国民の評判が悪かった。

 そこで人気取りのために補助金復活を打ち出したのだが、それが岸田政権の限界を浮き彫りにすることになった。

まず、補助金の継続期間がたった3カ月ということだ。

「酷暑を乗り切る緊急支援」という苦しい言い訳がなされているが、景気低迷が続いているのだから、本来なら期限を切らずに補助金を出すのが筋だ。

 ところが財務省が許さなかった。

財務省はスポット的な財政出動は認めても、継続的な財政負担増を極端に嫌がる。

つまり、岸田総理が財務省から引き出せたのは、たった3カ月分の補助金だけだったことになる。

待ち受ける巨大な増税・負担増

岸田総理は、ガソリン代抑制に向けて石油元売りに支給している補助金も、年内の継続方針を明らかにしたが、両者とも財源の明示はなかった。

 一方、電気・ガス代の補助金復活を表明した同じ日に政府は中長期的な財政指針を示す「骨太の方針」を閣議決定した。

このなかで国と地方の基礎的財政収支(プライマリーバランス)を黒字化させる目標を3年ぶりに明記した。

しかも黒字化の時期は来年度で、プライマリーバランスの対象も国ではなく、より厳しい財政緊縮が必要となる国と地方の合計にした。

つまり岸田総理は、短期的な負担減を打ち出す一方で、中長期的な増税・負担増を明確にしたのだ。

 たった3カ月の負担減の直後に巨大な増税・負担増が待ち受けているのだから、消費者が財布のひもを緩めるわけがない。

秋には総合経済対策を打つことも岸田総理は打ち出したが、こうした状況を踏まえれば、大した中身が出てくるとは到底思えない。

 結局、苦境が続く日本経済を救うためには、岸田総理を交代させるだけでは不十分で、官邸を完全掌握している財務省の力を削いでいくしか方法がない。

ところが、いま「ポスト岸田」として名が挙がっている人たちは、財務省に陥落した人ばかりだ。

唯一、財務省と対峙できる可能性を残しているのは、高市早苗経済安全保障相くらいだろう。

 改革のためには、まず総選挙で自民党を下野させ、新政権のなかで親財務省派の議員を隅に追いやり、そして反財務省派を中心とした議員をその次の総選挙で大量当選させるというシナリオしかない。

残念ながら、それには10年以上の年月がかかる。その間、日本経済は転落を続けるだろう。

「週刊実話」2024年7月18日号より