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六代目山口組VS神戸山口組――和解交渉の「怪文書」真偽

六代目山口組VS神戸山口組――和解交渉の「怪文書」真偽 
(C)週刊実話Web

「六代目山口組(司忍組長)と神戸山口組(井上邦雄組長)が手打ちするいう話が、4月下旬にSNSでヤクザ業界内に広まったんや」(関西の組織関係者)

両山口組は分裂以来、約5年8カ月にわたって、血の抗争を繰り広げ、依然として終結の兆しが見えない状況だった。むしろ、六代目側が再び武力行使に打って出る危険性も指摘され、膠着状態の中で静かに緊張が高まっていたほどだ。

そのため業界内のみならず、警察関係者にとっても寝耳に水の話であり、これまで以上に情報収集に追われたという。

「一般社会に限らず、今はヤクザ業界でもSNSで情報が拡散されとる。関西におっても、あそことここの組織が揉めたとかいう遠方の情報は、すぐに入ってくるで。その内容を鵜呑みにはせんけど、自分で情報を確かめてみたら、あながちガセとも言えんようなこともあるんや。今回の手打ちの噂に関しては、やけに内容が細かくて一部には事実も含まれとった。せやから関係者も警察も、降って湧いた話とはいえ無視できんかったわけや」(同)

これまでSNSを通して出回る山口組分裂の〝裏事情〟は、その多くが私見を含んだ一方的な主張といえ、情報戦という見方すらされなかった。しかし、今回は時系列で双方の動向や、間に入るとされる具体的な他組織の名前も上げた内容だったため、その真偽を抜きに衝撃が走ったのである。

「拡散されたSNSでは、まず九州の道仁会・小林哲治会長(福岡)と、神戸山口組の寺岡修若頭(俠友会会長=兵庫淡路)が会っとるいう噂を端緒に、《神戸山口組の行く末を話し合っていたらしい》としとる。

双方が顔を合わせたんは事実のようやが、内容は聞こえとらんし、実際には神戸寄りとされる俠道会の池澤望総裁(広島)や浅野組の中岡豊総裁(岡山)も関わっとるらしいから、一番は親睦を深める目的があったんとちゃうか」(同)

池澤総裁と寺岡若頭は兄弟分の間柄にあり、道仁会と俠道会も親交が深い。何より道仁会は、稲川会(内堀和也会長=東京)と親しい上、住吉会とは関功会長体制(現・小川修司会長=同)当時に、業界初の「五分の兄弟会」として親戚縁組を行っている。

こうした強力な人脈を持つ小林会長が神戸山口組と接触したことから、内容が取り沙汰され、注目が集まったのだ。

「六代目山口組と神戸山口組の間に、10団体が仲裁に入るとSNSにはあった。ゴールデンウイーク明けを目指して、手打ちの話を進めとるいう内容やった」(同)

国内最大組織である山口組の分裂問題だけに、当初から〝時の氏神〟と呼ばれる仲裁役は、誰も担えないとさえいわれてきた。それだけに、SNSで出回った〈10団体が仲裁に入る〉という内容には、ある種の説得力が加わった。

ところが、各方面が事実確認に奔走する中、4月23日に神戸山口組が〝緊急通達〟を出したのだ。

抗争再燃の危険性

「今回のSNSの内容を否定する形で、『噂に惑わされないように』としたんや。これを聞いて、結局、情報戦のたぐいの〝怪文書〟やったんかと思うたで。神戸側に揺さぶりを掛けるためやったんか分からんが、逆に井上組長の『最後まで闘う』いう意志に変わりはないいうことが証明されたわけや」(同)

ただ、これによって六代目山口組が武力行使に打って出る危険性が、より高まったという見方もされた。

「いくら切り崩し工作を進めようとも、神戸側の方針がブレない限り、分裂終結とはならないはずだ。政治的な手法にしても同様だろう。そうなれば、六代目側が起こすアクションは一つしかない。再び攻撃を仕掛け、力ずくで山口組統合に持っていく可能性がある。特定抗争指定の警戒区域がジワジワと拡大されているため、多くの組員を抱える六代目側としては、一刻も早い解除を目指しているはず。山口組の分裂終結なくして、特定抗争指定の解除はないからだ」(業界ジャーナリスト)

分裂後、対立事件による死者は7名に上り、神戸山口組直参の古川恵一幹部も命を落とした。さらに、神戸側からは直参の離脱や引退が相次いだが、組織として立ち続けている。

「そもそも井上組長らが離脱した背景には、六代目体制への否定的な考えがあった。分裂の翌年、全国規模で発砲やトラック特攻といった抗争事件が頻発した際、神戸側は『我々は喧嘩をするために山口組を出たわけではない』として鎮静化を図ったように、武力でモノを言うつもりはないようだ。組織の存続をもって、六代目側への意思表示を続けていくというスタンスなのではないか。だからこそ、切り崩しが活発化しようとも抗争が激化しようとも、動じずにきたといえる」(同)

終結の糸口が見えない山口組の分裂問題は、他団体にとっても決して他人事ではないという。

「警察の動きが活発になって、こっちにまで目を光らせるようになった。分裂が任俠界に混乱を招いたのは事実で、全体の〝バランス〟にも影響が及んだ。取り締まりも激化して、これからの時代は対警察との闘いになってくる。その中で、任俠界が一丸となって立ち向かっていくのが望ましい。だから、分裂も早く手仕舞いになればいいというのが本音だが、まだ表立って他組織が仲裁に入るという段階ではなく、なかなか難しい話ではある…」(関東の他団体関係者)

六代目山口組と神戸山口組の和解交渉を示唆する〝怪文書〟騒動は、神戸側が内容を否定したことで幕を閉じた。それと同時に、分裂問題の根深さが垣間見え、長期戦になると予想される。

「今後、六代目側と神戸側との間で起きる事件の内容次第では、急きょ他組織が間に入らざるを得ない事態になるかもしれない。我々も固唾を呑んで見守っている状況だ」(同)

再統合に五代目山健組も

警察当局も締め付けを強化しており、六代目山口組直系組織・良知二代目政竜会(竹嶋利王会長)の静岡県富士宮市にある本部に対し、県暴追センターが地元住民に代わって、組事務所の使用差し止めを求め、静岡地裁に仮処分の申請を行ったのだ。

「当局の認知では、一昨年ごろ静岡県から東京都内に拠点が移され、他団体とのトラブルもあって、再び静岡県内に新たな拠点を構えていたということです。組員の出入りが確認されたため、県警は昨年5月に組事務所への家宅捜索に踏み切っていました。今回の仮処分申請も、当局主導といえます」(全国紙社会部記者)

昨年1月、都内にあった良知二代目政竜会の本部にダンプカーが突っ込む事件が発生。六代目山口組の親戚団体である松葉会(伊藤芳将会長=東京)系組員が逮捕され、約1週間後には松葉会本部に火炎瓶が投げ付けられる事態に発展した。即座に解決が図られ、その後、良知二代目政竜会は静岡県内に拠点を移転したとみられていた。

「事件もあったから、警察は静岡県内でも組事務所を使えんようにして、活動を制限するんが目的やろな。けど、特定抗争指定になってから分かるように、組の運営実態が不透明になるだけやで」(ベテラン記者)

一方、兵庫県警によって詐欺の疑いで逮捕されていた六代目山口組直参の北島虎・二代目杉組組長(愛知)が、4月28日に釈放された。

「北島組長の知人である男が、組長に渡す目的で金融機関のキャッシュカードなどを再発行させたいう容疑やったんやが、すでに疎遠になった人物で、金のやりとりも一切なかったそうや。北島組長が不起訴処分になったんも当然で、逮捕の目的も単なる実態把握やったんとちゃうか」(地元記者)

また、五代目山健組・中田浩司組長(兵庫神戸)が実行犯として逮捕、起訴された三代目弘道会(竹内照明会長=愛知)の〝神戸拠点〟における組員銃撃事件で、共謀したとする殺人未遂と銃刀法違反の容疑で逮捕された河合将次組員を、神戸地検は不起訴処分とした(4月14日付)。

「河合組員は中田組長の側近といわれ、常にそばに付いとった。せやから、県警も目を付けたのかもしれんが、すでに中田組長が起訴されとるのにな。中田組長は『若い衆は宝』やと言うとるそうやし、子分が巻き込まれるのは本意やないやろ。警察の勇み足や」(別の地元記者)

中田組長が現場不在となって、1年以上が経過した。その間、拘置所で神戸山口組からの脱退を決意し、山健組も分裂。五代目山健組は「中田親分の帰りを待つ」という意志のもと、独立組織として活動を続けている。

それに対し、六代目山口組は〝不干渉〟を貫いているが、分裂問題の行方次第では、方向性も変わってくる可能性があるという。

「もとは山健組も菱の代紋を掲げていたのだから、六代目山口組にしてみれば、五代目山健組も山口組再統合の範疇だろう」(前出・業界ジャーナリスト)

複雑化する分裂問題は、終結までに時間が掛かるとみられている。

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