『プロジェクトV』
監督/スタンリー・トン
出演/ジャッキー・チェン、ヤン・ヤン、アレン、ムチミヤ、シュ・ルオハン、ジュー・ジャンティン、ジャクソン・ルー他
配給/ツイン
ハリウッド、ボリウッドに次いで、いよいよ〝チャイウッド〟時代の到来か!? と思ったほどの超弩級スケール感。ジャッキー・チェン率いる国際特殊護衛部隊「ヴァンガード」が、中東の過激派組織に誘拐された実業家と、その娘の救出に向かうという話です。
舞台はロンドンに始まり、アフリカのザンビア、インド、ドバイ、台湾と、世界を股にかけて各地で派手なアクションを繰り広げ、米軍空母は出るは、迎撃ミサイルは出るはと、国家間の争いまで何でもあり。そこにまた、こってりとCGを施して、どんだけ金かけているんだという贅沢さ。ただ、ちゃんとジャッキー・チェンならではの笑いもまぶしてあって、香港映画時代を思い起こさせる人間臭さもプラス。
しかし、これだけ激しいドンパチをしておいて、最後に「市民の死者はゼロであった」などとエクスキューズするあたり、国威発揚のために批判を避ける配慮も見られました。コロナ禍で世界の映画界がストップしているのを尻目に、経済だけでなく、映画でも中国マネーの覇権を宣言しているかのようです。
ジャッキー・チェンは不老不死!?
例えば、ハリウッド映画のメジャー作品並みのデジタル加工。パンフレットでは、あえて稚拙とも見える過剰なデジタルの作り込みで、IMAXや3D版として上映する場合の効果を狙っているとありましたが、自分などには、どこまでが実撮で、どこからがCGか分からないほどの完成度。というか、どうせCGでしょと思っていたら、巻末のメイキングを見ると、予想以上に体を張ってロケしているのが分かります。
アクションレジェンドの矜持なのか、アフリカの激流でのアクアバイク撮影もジャッキー本人が臨んだようで、転覆してあわや事故という危険な瞬間もあったようです。67歳のジャッキー、老体を晒す映画なども何作も作り、この連載でもご紹介してきましたが、本作では皺もなくなり、今後は不老不死で全世界を席巻し続けるんじゃないか。香港統制が強化された今、自由に映画を作り続けるためにも国家に全面協力するという覚悟を、勝手に感じてしまいました。
蜂型やハト型ロボットが情報収集に使われるなど、近未来的な兵器も見られて、こういうのが現実化するのではという空恐ろしさも。
数あるアクションシーンの中でも、ドバイでの金ピカ・スーパーカーのチェイスシーンが自分にはツボでした。ちょうどマクドナルドの春のキャンペーンで、金のミニカーがノベルティになっていて、欲しいと思っていたところでしたんで。
やくみつる
漫画家。新聞・雑誌に数多くの連載を持つ他、TV等のコメンテーターとしてもマルチに活躍。
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