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ヤクザのおくりびと⑥めちゃくちゃに壊れた四ツ木斎場を突貫工事で修復

ヤクザのおくりびと⑥めちゃくちゃに壊れた四ツ木斎場を突貫工事で修復
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【不定期連載】 #①から読む

銃撃と制裁の混乱で、めちゃくちゃに壊れた四ツ木斎場を突貫工事で修復するには、サッシ屋、タイル屋、ガラス屋、清掃業者など、多様な業者が必要だった。

中村が西口茂男氏の許可を得て、協力を呼び掛けた途端、組員たちが一斉に知り合いの工事関係業者に電話を掛けていく。

業者が確保できた組員には、さきほど通夜で記帳したように、組織名と氏名に加えて呼び出す業者名を、記帳台に並んだコピー用紙に記載してもらった。そこで、状況を確認するために記帳台に歩み寄ってきた西口氏に、中村が提案した。

「親分、ごくろうさんと言ってやってくださいよ」

若い組員たちにすれば、普段は口を利くことすら許されないほどの大親分から直々に声をかけてもらえれば喜びもひとしお。新たなる業者の確保や、組員から作業員にはっぱがかかって工事がはかどることを期待しての要請だった。

西口氏は、中村の提案に頷き、記帳台に続々と詰めかける組員に対し、「よろしく頼むな」「任せたぞ」「頼んだぜ」などと声を掛けたのだ。

「これってお金は出るのでしょうか?」

効果は絶大。各地から業者が斎場に詰めかけ、夜を徹した作業に臨んでいく。

手当たり次第に業者をかき集めたせいだろう。互いに見知った業者が鉢合わせとなり、「あんたも呼ばれたの? なら、うちが出る幕はないわ」と重複に気づいて踵を返す場面もあった。

「半ば強引に招集された業者もいたんだろうね。俺に近づいて、『これってお金は出るのでしょうか?』なんて不安げに尋ねてきたこともあった。『請求はうちにまわしてください』って安心させて、作業に集中させたよ」

復旧作業が始まる前には、警察による現場検証も入っていた。

「3人も撃たれた重大事件なんだから、本来であれば長時間の入念な鑑識作業が必要となりそうなもんだが、意外とあっさり終わったように記憶している。既に犯人が特定されているというのも大きな要因だと思うけど、それより連れ去られたヒットマンが西口親分の指示で、殺されることなく出頭させてたからね。警察も意気に感じて、復旧作業のために早めに引き上げたんじゃないか」

こうして、住吉会と各業者が一丸となった突貫工事は、翌日昼前に無事完了することができた。その後に起きる血みどろの復讐劇のことなど知る由もなく、中村は張り詰めた緊張の糸を一気に解きほぐした。

ヤクザのおくりびと#⑦に続く

ヤクザのおくりびと⑥めちゃくちゃに壊れた四ツ木斎場を突貫工事で修復

中村和男(なかむら かずお)
東京・杉並で二代続く葬儀社を営む家庭で生まれ育つ。大学卒業後、20代で自らの葬儀社『日葬祭典』を創業。1970年代に、後の住吉会総裁となる西口茂男氏の知己を得て、同氏が率いていた住吉会向後一家(当時)関連の葬儀に携わるようになる。以降、住吉会葬や関東二十日会葬まで執り行い、〝住吉会指定葬儀社〟を自負する「ヤクザのおくりびと」
ブログ『日葬祭典 回想録』

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