
今年3月、沿線12駅が廃止となったJR宗谷本線。旭川~稚内を結ぶ日本最北の鉄道路線で、過去5年間の1日当たりの乗車人員が3人以下の無人駅について廃止が打診されていたが、中には1日の通勤・通学利用客がほぼ0人ながら廃止を免れた駅もある。
その1つが、北海道天塩郡幌延町にある糠南(ぬかなん)駅だ。
ここの周りには牧草地があるだけで、建物は皆無。幹線道路から外れているため、車もほとんど通らない。北の原野に佇む、文字通りの秘境駅だ。
ホームは底が抜けそうな板張りで、長さは列車ほぼ1両分と短い。当然、無人駅で駅舎もなく、あるのは物置兼用の小さな待合室だけ。見た目は完全にただの物置で、糠南駅に関する情報を事前にチェックしていなければ、ここが待合室だと気付かないだろう。

物置の中は除雪用具のほか、椅子代わりに置かれた瓶ビールの空きケースが2つあるだけ。たまに訪れるのは鉄道ファンくらいなもので、これで十分かもしれないが、そんな駅ゆえにトイレも当然ない。待合室には最寄りのトイレを案内する貼り紙があったが、そこは駅から2キロも先。ちょっと用を足しに行こうものなら、それだけで1時間はかかってしまう。
毎年12月に駅でクリスマスパーティーを開催
それ以上に衝撃的なのは、時刻表の隣にある「熊出没マップ」。なんと駅一帯はヒグマの生息エリアで、日時入りで目撃されたポイントが紹介されていた。
過疎地帯のこのエリアで、これだけ熊の姿が確認されているのであれば、トイレに行って戻る途中に遭遇してしまう可能性は大いにある。つまり、たかがトイレと思うかもしれないが、この駅に関してはそこまで行くだけでも命がけなのだ。
そんな糠南駅だが、ここは鉄道ファンの間でも有名で、秘境駅の中では全国でも屈指の人気を誇る。昨年はオンライン開催だったものの、毎年12月には駅でクリスマスパーティーが開催され、全国から大勢のファンが集まるイベントとなっている。
地元も町おこしとして活用し、駅の維持費を自治体が負担することで存続が決定した。鉄道ファンたちの熱意が廃止の危機を救った糠南駅。彼らの聖地とも言える秘境駅なのだ。
【日本全国「不思議な駅」~その②~に続く(#②を読む)】
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