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北朝鮮の軍事パレード決行で分かった『米国製コピー兵器』の開発状況

Anton_Medvedev / Shutterstock

朝鮮労働党創建75周年を迎えた10月10日、北朝鮮が真夜中の軍事パレードで、これ見よがしに公開したのは、新型のICBM(大陸間弾道ミサイル)とSLBM(潜水艦発射弾道ミサイル)だった。

「パレードに登場した両兵器は、昨年末に金正恩朝鮮労働党委員長が『世界は遠からず、朝鮮が保有する新たな戦略兵器を目撃することになる』と予告したものです。特に新型ICBMは、米本土を射程に入れる『火星15』よりも全長が2~3メートル伸びた上、直径もやや太くなっていました」(軍事アナリスト)

この米露をしのぐ世界最大級のICBMは、特に弾頭部が長くなったため、多弾頭型の可能性を指摘されている。

「多弾頭型に対抗するためには複数の迎撃機が必要となりますから、現在、悪戦苦闘している米国のミサイル防衛システムにとって、さらなる難題になるでしょう。トランプ大統領も北朝鮮の軍事パレードに、強い怒りと失望を示したようです」(同)

とはいえ、巨大化したミサイルが本当に従来以上の性能を持っているのかは、現段階では判断しかねるところだ。

「そもそも北朝鮮の長距離ミサイルは、これまで一度も通常軌道での発射実験をしておらず、『火星15』にしても計算上は米大陸を射程に入れているというだけです。ですから、米国も最終的な性能評価を下していません」(同)

しかも、これだけ大きいミサイルとなれば運用が難しく、実戦配備には疑問符が付くようだ。

夜の軍事パレードはディズニーランドの真似!?

「巨大なタイヤを履いた発射台に搭載され、野外で機動しなければなりませんから、北朝鮮の貧弱な道路事情の中、故障や事故をせずに運用することは相当な難題。大きいことはいいことだというのは、1960年代の発想です」(同)

また、夜間を利用したきらびやかなパレードの演出には、正恩氏の妹、金与正党第1副部長が関わっていた可能性が高いという。

「与正氏は7月10日の談話で、『米国の独立記念行事を収録したDVDを入手したい』と表明していました。とりわけ平壌市民にとって軍事式典の開催は、動員という厳しい義務が課される一方で、いわばディズニーランドのエレクトリカルパレードを見るような一種の政治ショーなのです」(北朝鮮に詳しい元大学教授)

軍事パレードを閲兵した正恩氏は、祖父の金日成国家主席を意識するかのようなグレーのスーツに身を包んでいた。その意味は先軍政治から軌道修正し、軍より党を上に置いた新体制のアピールで、与正氏による演出の一環とみられている。

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