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鬼滅の刃“炭治郎マスクで感染!?”ママ友たちの恐怖のウワサ――『コロナ陰謀論』の真実~その③~

鬼滅の刃
鬼滅の刃(C)週刊実話Web

テレビアニメや原作コミックのみならず、昨年公開された劇場版が、今年3月下旬には興行収入380億円を超え、近年まれに見る大ヒット作品となった『鬼滅の刃』。

その勢いはとどまることを知らず、現在では関連グッズなどもバカ売れし、ついにはマクドナルドをはじめとする大企業が続々とコラボするなど、それこそ「どこに行っても『鬼滅』ばかり」といった様相を呈している。

その一方で、最近、そうした明るい話題とは裏腹に、『鬼滅』を巡る不穏なウワサ話が都市伝説的に広まっているのを、読者諸兄はご存じだろうか。

「ウワサを初めて耳にしたのは、昨年の10月半ばだったと思います。ちょうど、劇場版が公開されてから2カ月ぐらいがたち、それまでの歴代1位だった『千と千尋の神隠し』の興行収入を超えたことが、メディアでセンセーショナルに報じられた時期ですね」

都市伝説的に流布する『鬼滅』を巡る不可解なウワサ話について、そう語るのはインターネット上のトレンドに詳しいIT系ニュースサイトの記者A氏。当初、その〝ウワサ〟はSNS上でチラホラと見掛ける程度のものだったという。

「最初はフェイスブックなどの、子育て系アプリ内のコミュニティーなんかで出始めたんです。『鬼滅マスクをしている子どもがコロナになった』って。もちろん、当時から多くの人が即座にデマだと思っていましたが、その後、同様の投稿があまりにも増えたために、急速に信じる人が増えていったようです」(A氏)

確かに昨年は空前の『鬼滅ブーム』だったと同時に、はからずも新型コロナウイルスが爆発的に増加した1年だった。そうした最中で増殖したのが、『鬼滅』に登場する象徴的なデザイン「緑と黒の市松模様」の布を使ったマスクだ。

緑と黒の市松模様自体は、古くから存在しているものであるため、その大半は『鬼滅の刃』の公式グッズではなく、アンオフィシャルなものとして流通していた。しかし、小学生や園児といった低年齢層の間で流行し、現在では100円ショップなどでも同様のマスクを見掛けるまでの大ヒット商品となっている。

しかし、この『鬼滅』マスクを着けていた子どもが新型コロナに感染したというデマが流れ始め、やがて大手メディアが「10歳未満のコロナ感染者」の出現を報じるようになると、両者はまったく関係のないものでありながら、あたかも真実であるかのように拡散されていった。

炭治郎に主役を奪われた前作主人公の呪い?

「最初は根も葉もないデマだったものが、途中で『ママ友から聞いた話』というテイで、『鬼滅マスクをしていた知人の子どもが感染した』という内容に変化し、そこからさらに『鬼滅の模様は縁起が悪い』という派生のデマまで生まれました。確かに、当初は市販されている布を使って、ママさんが自作した〝手作りの布マスク〟であることが大半でしたから、不織布マスクに比べれば効果が薄いというのは事実だと思います。しかし、当然ながらあのマスクをしていて、子どもが感染しただの、死んだだのという話は裏が取れていません」(A氏)

仮に百歩譲って、ハンドメイドの鬼滅マスクを使用していた子どもがコロナに感染したとしても、それは呪いなどではなく、あくまでマスクとしての機能の違いが影響していると考えてしかるべきだろう。しかし、普通に考えれば、誰にでも分かることでさえ「呪い」と捉えてしまう理由が、『鬼滅』には隠されているのだという。

「『鬼滅』が連載される前、パイロット版的に掲載されたものの中に、『過狩り狩り(かがりがり)』という作品があります。この『過狩り狩り』は、かなり『鬼滅』と似ている作品で、主人公は片腕と視力を失った「ナガレ」という人物です。要はこの主人公を封印して、新たに竈門炭治郎を主人公に迎える形で、『鬼滅』の連載がスタートしたわけです。そうした経緯があるために、『封印された主人公・ナガレの呪いではないか?』という声が、いつの間にか囁かれるようになったのです」(A氏)

大ヒットを記録していながら、なぜか元主人公による「呪い」だと騒がれ、そうしたデマ同然のウワサ話がさらなる都市伝説を生み続けている『鬼滅の刃』。こうしたものが無責任に拡散することが、躍進を続ける『鬼滅』ブームの足かせになるのだろうか? 今後も注目したいところだ。

【「コロナ陰謀論」の真実~その②~からの続き(#②を読む)(#①を読む)】

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