1回目の緊急事態宣言が解除される直前の2020年5月12日、東京・歌舞伎町のバーで雇われ店長をしていた男(30)が恐喝未遂容疑で捕まった。
コロナの影響で客足が減り、やむなく閉店。知人の紹介で宝石商を始めたが、それとて不要不急の外出禁止とテレワークの推奨で、客と商談できる時間がなく、収入には結び付かなかった。
困り果てているところへ声を掛けてきたのが、繁華街時代の知人だった。「盗撮犯狩りのメンバーが足りないので、加わってくれないか」という誘いだった。
「今、街はガラガラだし、不審な動きをしている男は見つけやすい。盗撮魔も人目につかないということで、ノコノコやって来るそうだ」
男は、その話に乗ることにした。連絡専用のガラケーを手渡され、その場に集まった男たちと徒党を組んで〝盗撮ハンター〟に精を出すことにした。
警察に薬物取引と勘違いされて職務質問
「盗撮犯は、警察に突き出すと言えば、言いなりになる。すでに協力者のキャバ嬢や風俗嬢は用意してある。被害者のフリをして電話口に出し、『盗撮は100万円以下の罰金と聞いたんだけど』と言わせればいい。それでイチコロだ」
メンバー同士は名前で呼ばず、愛称で呼んでいた。2人組で行動し、片方が盗撮犯を見つけたら、もう一方が仲間に連絡する。たいていは大勢で駆けつけて取り囲み、被害者役の風俗嬢が電話で交渉し、「被害届を出してほしくないんだったら金を払え」などと言って、示談金をせしめるのだ。そのおかげで男は懐が潤うことになった。
しかし、最後、捕まったのは、とんでもないヘマからだった。いつものように「盗撮ハンターをやるから、池袋駅に来てくれ」と呼び出された男は、階段を上がる女性のスカートの中にスマホを突っ込んだ男(39)の腕をガッシリとつかんだ。
「今、盗撮したよね?」
騒ぎに気付いた被害者の女性が駅員を呼ぼうとしたので、「私は警備員です。これから警察に連れて行きますから大丈夫です」と言って、その場から離れた。
近くの公園で示談の話し合いをしていたところ、ちょうど警ら中の警察官が通りかかり、「薬物売買の取引ではないか」と勘違いされ、職務質問されたのだ。
事情が判明して、万事休す。盗撮犯ともども、現行犯逮捕されることになった。
「自分たちも悪いが、相手も悪いので、許されるだろうと思った。うまくいくことばかりではなく、盗撮犯が観念して、駅員に引き渡すことになると、金にならないので困った。コロナの影響で金に困っていたので、いくらかでも儲かればいいと思った」
盗撮する者がいるから、ハンターも生まれる。盗撮行為自体を取り締まる法律ができなければ、どうにもならないだろう。
【コロナ闇犯罪FILE①からの続き(#①を読む)】
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