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初の国政選挙「3戦全敗」で菅政権終了“アベノゾンビ”が再々登板の悪夢

自由民主党
自由民主党 (C)週刊実話Web

菅政権下で初となる3つの国政選挙(4月25日投開票)で自民党が全敗した。

3つのうち2カ所は「政治とカネ」が争点となった。収賄罪に問われて在宅起訴されている吉川貴盛元農水相の議員辞職による衆院北海道2区補選は、勝ち目がないとみた自民党が早々に候補者擁立を見送り〝不戦敗〟に。一方、河井克行・案里夫妻の選挙買収事件による参院広島再選挙は、地元重鎮の岸田文雄前政調会長らが信頼回復を訴えたが、野党推薦の新人・宮口治子氏に敗れた。

「参院長野補選は、故・羽田孜元首相の長男で、コロナで急逝した立憲民主党の羽田雄一郎氏の〝弔い合戦〟となり、実弟の羽田次郎氏が当選しました。〝3戦全敗〟という事実が菅政権に与えるダメージは計り知れません。北海道と長野は仕方がないといえば仕方がないと言えますが、衆院の7小選挙区のうち6つを押さえる〝自民王国〟の広島は、何とかなると思っていたのです」(政治部記者)

4月10日の午前には、土曜日にもかかわらず、首相が公邸に自民党の山口泰明選対委員長を呼び、広島の情勢調査結果を報告させていた。告示1週間前には5ポイント差を付けてリードしていたはずが、最新の調査で2ポイント差になっていたからだ。首相が「ずいぶん迫られているじゃないか。大丈夫か?」と言うと、山口氏は厳しい表情のまま押し黙っていたという。

「カネを受け取った自民党県連所属の県議と広島市議計24人は現職にとどまっています。彼らは刑事責任も問われず、選挙の裏金の原資となったとみられる1億5000万円の使途の解明もうやむやのまま。岸田氏は『自民党を変えていかなければならない』と訴えましたが、有権者にしてみれば〝変える姿勢が見えないから、自民党の候補を落とすしかない〟と判断したのでしょう」(同・記者)

東京五輪が「失敗」に終われば即退陣

投票前、自民党の世耕弘成参院幹事長は「結果は解散に影響しない」と予防線を張っていたが、「菅首相では選挙を戦えない」との声が強まるのは必至だ。

「政治とカネ」に対する不信感だけで〝3戦全敗〟となったかというと、あながちそれだけが原因とも言い切れない。

「三度目の緊急事態宣言に追い込まれたコロナ対策に対する国民の不満も大きい。はっきり言って、政府は新型コロナ変異株の感染力の強さを読み間違えた。ゴールデンウイーク後に感染者数が急増すれば、菅首相の足元は大きく揺らぐ」(自民党関係者)

首相に近い自民党無派閥議員によると、コロナ感染が拡大する中で、首相は野党がどのタイミングで内閣不信任決議案を出してくるか気にしているという。

「首相は、不信任案提出は解散の大義になると言うが、状況による。恐らく野党は6月16日の通常国会会期末近くに出してくる。与党は否決するが、コロナで首相の失速が著しければ、解散できず否決した形になり、菅おろしに勢いを与える」(永田町消息筋)

つまるところ、永田町では解散権を失ったと見なされるわけだ。

7月の都議選で、自公で目標とする過半数を取れなかった場合も痛手だが、首相の懸念はまだある。

「実は、最も心配しているのは五輪の失敗だ。先進国の中で最低レベルのワクチン接種状況で強行開催したとしても、不参加国が続出し、内外から『失敗』の烙印を押される事態になれば致命傷になる」(同)

自民党の二階俊博幹事長による「とても無理ならスパッと止めないといけない」発言も、政権内に中止の選択肢がまだ残っていると受け止められ、内外で大きな波紋を呼んだ。失敗や中止となれば、残された道はいよいよ「退陣」しかない。

アベ&アソウに接近する菅総理

こうした展開となった場合、主導権の確保を狙ってくるのは安倍晋三前総理と麻生太郎財務相だ。首相もそれが分かっているからこそ、3月から4月にかけて距離のある安倍、麻生両氏と立て続けに会っていた。

首相は安倍氏との会談で、将来の総裁候補として安倍氏の意中にある、実弟の岸信夫防衛相について「よくやってくれています」と評価。「(安倍氏が望む)敵基地攻撃能力保有の議論を進めないといけない」と、この先の対応を約束した。

麻生氏に対しては、麻生氏の地元・福岡での武田良太総務相との確執を踏まえ、4月11日投開票の福岡県知事選で武田氏系の候補を降ろし、麻生氏系候補で一本化した経緯を説明。麻生氏は終始上機嫌だった。

安倍、麻生氏とも当面は菅首相を支えていく構えだが、政権が死に体になれば話は別だ。

「2人の手の内には、総裁選出馬に意欲を示す岸田氏、知名度が高い河野太郎行政改革担当相がいる。ただ、岸田氏は地元・広島での参院再選挙敗北、河野氏もコロナワクチンの供給遅延というキズがある。まさに一寸先は闇の状況が続きます」(前出・自民党関係者)

とはいえ、いざ総裁選になれば「菅政権の不始末はすべて首相本人に背負ってもらう」(細田派ベテラン)算段だというから、菅首相が崖っぷちに立たされているのは間違いない。

永田町界隈では「安倍氏が再々登板の準備に入った」などというウワサも囁かれ始めた。リオ五輪の閉会式でマリオに扮した安倍氏、今度は〝アベノゾンビ〟になるつもりか。

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