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新型コロナ“変異株を甘く見過ぎた”と指摘!「春のセンバツ」後に事態は急変

(画像)StunningArt / shutterstock

大阪府や兵庫県を中心に起きたコロナ〝第4波〟のビッグウエーブが全国的に拡大したことを受けて、自民党の二階俊博幹事長が「東京五輪中止」に踏み込んだ。

浮上したのが、センバツ甲子園大会の「犯人説」。全国大会が人流を作り、集まった観客が地方に持ち帰ったという見立てだ。3カ月後に迫るオリンピックへの影響は、もはや避けられそうにない――。

プロ野球やサッカー・Jリーグなどフランチャイズ制が確立しているプロスポーツの試合と、春・夏の全国高等学校野球選手権大会(甲子園球場)との違いは、「観客の構成」にある。プロスポーツが地元ファンがほとんどなのに対し、甲子園大会は日本全国から観客が集まるからだ。

今夏の東京五輪(7月23日~8月8日)は、観戦者を日本人(日本在住の外国人を含む)に限定し、入場者を制限して開催するというのが菅義偉首相と小池百合子都知事の方針だ。日程も同じ2週間程度のため、今年のセンバツ高校野球大会(3月19日~4月1日)は、東京五輪のモデルケースとして実施された。

大会期間中は選手や関係者に何度もPCR検査を行ったため、クラスター(集団感染)こそ起こらなかったものの、大会後に事態は急変。大阪府や兵庫県をはじめ、全国でコロナ感染が再拡大したのだ。

一足早く、感染力の強い「N501Y変異種ウイルス」に置き換わった大阪の変異株を観客がそれぞれの地方に持ち帰り、伝播。ここにきて五輪中止論が強まったのは、このためだ。

変異株を甘く見過ぎていた…

「2年ぶりのセンバツ甲子園は、1試合につき観客1万人を上限にして開催されました。しかし、全国から応援団や地元関係者が次々に甲子園に来場。しかも春休みや卒業旅行の時期と重なったため、球場近くの兵庫県尼崎市や西宮市の宿泊施設はどこも満室で、勝ち進んだ高校の関係者はやむなく大阪中心部や神戸市などのホテルに宿泊しました。この人流により大阪、尼崎、西宮、芦屋で感染者が多発し、観客がウイルスを持ち帰ったことで〝負の連鎖〟が起きたのです」(全国紙の高校野球取材班)

英国型変異株のN501Yは、2月ごろから対策遅れを指摘されていたが、第3波が下降傾向にあったため、今年は観客を入れてセンバツが開催された。主催者も「大阪府、兵庫県も変異株を甘く見過ぎていた」と指摘する医療関係者は多い。

「このことで分かったのが、全国から人が集まる大規模イベントの重大な危険性と後遺症です。各県連などから『五輪を中止して開催にかかる費用や医療スタッフをワクチン接種などのコロナ対策に費やした方が支持を得られる』との進言もあり、二階さんも、五輪中止も選択肢とぶち上げたのでしょう。『人類がコロナに打ち勝った証しとなる大会にしたい』とアクセルを踏み続ける首相を制御できるのは、もはや〝キングメーカー〟の二階さんだけですから」(国会議員秘書)

東京五輪まで3カ月を切った先週、二階幹事長は民放の収録で、次のように発言して注目を集めた。

「とても無理ということなら、スパッとやめないといけない。オリンピックで感染をまん延させると、何のためのオリンピックか分からない」

図らずも五輪中止がゼロではないことが判明

しかし、世界中のメディアで「日本の与党幹部が中止も選択肢に」とのニュースが流れ、影響の大きさから、その後、党本部を通じて「何が何でも開催するのか、と問われれば、それは違うという意味で申し上げた」と釈明。しかし、図らずも中止の可能性がゼロではないことが判明した。

冬の第3波までは、東京、神奈川など首都圏が主戦場だったが、第4波は大阪都市圏が舞台だ。厚労省のアドバイザリーボードによれば、関西では症状が重くなる変異株の感染割合がすでに8割を超え、首都圏でも5割以上。ゴールデンウイーク明けには、首都圏、東海、沖縄でも9割以上に達するという試算もある。地方には重症病床が少ないため、的確な手を打たなければ医療崩壊を招きかねない。

ワクチン接種は、高齢者を対象に始まったものの、遅々として進んでおらず、国民に広く行き渡るのは秋以降の見通しだ。最優先だった医療従事者への接種もいまだ10数%程度で、ワクチン接種会場で高齢者と医療従事者の間での感染拡大も危惧され、五輪開催どころではない。

窮地の小池都知事は、GWの感染拡大が五輪中止の引き金になることを恐れ、人の流れの抑制を断行。テレワークの徹底とともに、「エッセンシャルワーカー(生活維持に欠かせない仕事従事者)以外は東京に来ないで」と、東京への出入り自粛を強く求め、政府も「大型連休中の感染拡大地区との往来の自粛」を要請するなど、東西を遮断する三度目の緊急事態宣言発令に踏み切った。

今夏の五輪、夏季甲子園は、開催するとしても無観客は避けられない。中止の可能性も強まっており、センバツの残した傷跡は大きいと言わざるを得ない。

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