菅義偉首相が創設に意欲を示す「子ども庁」を巡り、自民党内や霞が関では水面下で激しい主導権争いが勃発しようとしている。
そもそも「子ども庁案」は、このタイミングで、政権の〝目玉政策〟として、なぜ急浮上したのか。
「今年に入って自民党の自見英子、山田太郎参院議員らが中心となり、いじめ増加の防止策や急増する子どもの虐待対策、子どもファーストの環境づくりをどう推進できるかの勉強会が始まった。その中で子育て政策を扱う省庁がバラバラで、政策を一元化してスピーディーに対応できる省庁を持つべきとの提言がまとまり、3月末、菅首相に申し入れたことが発端です」(政治部記者)
総選挙の〝売り〟になると前のめりになった菅首相は、「子ども庁」創設に即ゴーサイン。本部長を二階俊博幹事長に依頼する力の入れようだ。
文科省VS厚労省VS内閣府…
「一方、この唐突な子ども庁案に仰天したのが、幼稚園を管轄する文科省や保育園を管轄する厚労省、幼稚園と保育園の機能を併せ持つ認定こども園などを管轄する内閣府です。いずれも縄張り意識が強く、動きもバラバラで縦割り行政の元凶になってきた。これを菅政権は兆単位の大型予算で、こども庁の下に集約したい意向です。各省庁とも人やカネを含めて、それを担いたいと躍起になっていますよ」(霞が関関係者)
現在、文科省と内閣府から複数案が浮上し、激しく競り合っているという。
「中でも内閣府案は、義務教育を含む文科省の領域に大きく踏み込んでいるために、文科省も黙ってはいないでしょう」(同・関係者)
もう1つの懸案が、初代長官を巡るバトルだ。
「これまで学校畑を牛耳ってきたのは、森喜朗元首相を頂点とする細田(博之)派。現職の萩生田光一文科相をはじめ、歴代文科相は細田派が多い。これに対して旗振り役を担う二階幹事長が、二階派をトップに据えようと暗躍しています」(自民党ベテラン議員)
本来、子どもを守るべき新省庁が、大人による利権争奪の修羅場となっては、まさに本末転倒だ。
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