
アントニオ猪木「出る前に負けることを考えるバカがいるかよ!」~一度は使ってみたい“プロレスの言霊”
1989年の参院選に当選して国会議員となったアントニオ猪木。ファンや関係者の間では、その引退の日がいつになるか噂されていたが、90年には久々に坂口征二との黄金コンビでリングに登場した。相手は猪木との対戦を直訴した橋本真也と蝶野正洋であった。
芸能人や政治家などのトラブルがメディアで報じられた際、これに対して「どうせプロレスだろ?」と、したり顔の物言いがなされることがある。つまり「揉めているのは互いに了解の上。最初から落としどころは決まっている」という意味であろう。
言い換えれば「プロレス=真剣な争いではない」との前提からの言葉というわけだ。では、本当にすべてのプロレスが、事前のシナリオ通りに行われているのかといえば、決してそうではない。
なるほど興行上の都合から、先に勝ち負けが決まっていたり、生中継の試合では放送枠内でうまく収めるため、試合中での時間調整もあったに違いない。それぞれレスラーがガチンコの潰し合いを始めてしまっては、故障者が続出して興行ビジネスは成り立たなくなるだろう。
昭和の新日は「ナチュラル」が基本。アントニオ猪木の言動も…
しかし、その一方で、特に昭和時代の新日本プロレスにおいては、試合内容をレスラー個々の力量に委ねる、いわゆる〝ナチュラル〟な試合がほとんどだったと語る関係者も多い。実際問題として、プロレスデビュー当時の北尾光司のように、スター街道を歩ませるべくしっかりとシナリオを用意したところで、それで成功できるとは限らない。やはり、最後にものを言うのは本人の技量や人間性であり、その意味でプロレスとは「観客との真剣勝負」とも言えるだろう。
また、昭和の時代においては、いくらマッチメーカーが試合の結末を決めていたとしても、これを部外者に漏らすことはあり得なかった。ここで言う部外者とは、対戦するレスラーたち以外のすべてであり、たとえレスラー同士でも、他の選手の試合については知らされていないケースがほとんどだったようだ。
リーグ戦などの場合には、選手の緊張感を保つため、試合当日になって当人たちに勝敗を伝えるケースもあったという。
レスラーでもそうなのだから、メディア関係者などは試合の結末やその後のストーリー展開を知らされるはずがない。団体に食い込んでいた一部の記者は、外部ブレーン的に意見を出すこともあったが、それでも最終的な決断について明確に知らされることはまずなかったという。
先に触れた北尾のデビュー戦は、1990年2月10日の東京ドーム大会で行われたが、このときのメインイベントはアントニオ猪木&坂口征二vs橋本真也&蝶野正洋のスペシャル・タッグマッチであった。
試合前の控室をレポートするテレビ朝日の佐々木正洋アナが、「もし負けるということがあると、これは〝勝負は時の運〟という言葉で済まないことになりますが」と質問すると、猪木は「出る前に負けることを考えるバカがいるかよ!」と張り手をかまして、怒りもあらわに「出てけ! コラ!」と控室から追い出した。
このやりとりについて、「局アナなら猪木勝利の結果は知っているはずだから、まったくの茶番だ」などというのは完全に的外れである。前年に参院議員となった猪木は、約8カ月ぶりの実戦。坂口も社長就任以降はリングを離れており、およそ10カ月ぶりの試合だった。
瞬時のアドリブで名場面が誕生
一方、橋本と蝶野は次代のメインイベンターとなるべく、実績を積んでいる段階。スポーツ的な感覚で言えば、むしろ橋本らが有利と考えるのが自然であり、通常はプロレスを担当していない佐々木アナが、「猪木敗戦からの引退」を想起したのも当然のことだった(なお、試合は橋本の重爆キックに苦しめられながらも、猪木が延髄斬りで蝶野をフォールしている)。映像で振り返ってみると、佐々木アナの質問に対して猪木が返答するまでにわずかの間があり、このことから猪木の言葉は、瞬時のアドリブであったことがうかがえる。
猪木がレスラー以外に張り手をかましたのも、このときが初めてで(闘魂ビンタが一般化するのは引退後のこと)、翌日、佐々木アナは病院で重度のむち打ちと診断され、入院するはめになったという。もし、このやりとりに台本があったなら、きっとそんなケガを負うこともなかっただろう。
素人を負傷させたことはいただけないが、それでも猪木の鋭い機転が生み出した名言&名場面であった。
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