
『グランパ・ウォーズ おじいちゃんと僕の宣戦布告』
監督/ティム・ヒル
出演/ロバート・デ・ニーロ、オークス・フェグリー、クリストファー・ウォーケン、ユマ・サーマン、ロブ・リグル、ジェーン・シーモア
配給/パルコ ユニバーサル映画
妻を亡くしたお爺ちゃんが娘夫婦と同居することになり、孫のピーターの部屋を借りることに。最初は同居を喜んでいたピーターでしたが、自分がネズミが出る狭い屋根裏部屋に追いやられると知って激怒。子供部屋奪還を誓って、お爺ちゃんにイタズラ戦争を仕掛け、お爺ちゃんも負けずに報復するという、何とも微笑ましいお話。
仕掛けるイタズラも今日的といいますか、ITを駆使しているわけです。自分はどうしたって、スーパーの無人レジも、スマホも使えないお爺ちゃん側。つい、お爺ちゃんに肩入れしたくなってしまいました。
とはいえ、本気でいがみ合っているのではなく、随所で「お爺ちゃん愛」が語られ、お互い愛しているからこそ全力でギブアップを取りにいくという感じです。つまり、内容は実に素直で分かりやすい。
アメリカの辛口批評サイトで「85%大満足」を獲得した全米大ヒットコメディーとチラシにはありますが、日米のお笑いセンスの違いは置いといて、この陰鬱とした日々のストレスを屈託のない笑いで解消するにはよろしいんじゃないでしょうか。読者の皆様も、くれぐれも、きっちり感染症対策をした上で、GWにお子さんやお孫さんを誘って見に行ってはいかがでしょう。
祖父母との関わりに対する苦い後悔…
何より、お爺ちゃんを演じるのは、あのロバート・デ・ニーロ。お爺ちゃんの友人にはクリストファー・ウォーケン、娘には『キル・ビル』のユマ・サーマンという贅沢さ。確かに、作品に厚みが出ています。
さて、見る前にパンフレットを読んでいなかったのですが、本作を最初に映画化へと導いたのは11歳の少年だそうです。原作は、彼が通う学校の課題図書。親が映画プロデューサーだったことから、映画化に結びついたらしいのですが、この少年はロバート・デ・ニーロのキャスティングも提案し、劇中のイタズラや脚本にも意見を出すなど、製作に深く関わったそう。
なるほど、11歳の視点から企画されたのなら、この素直さも納得です。寺田心くんは今12歳ですが、あのくらいの子供時代、何を思い、どう感じていたのか、50年も前なのに自分の記憶に結構、残っています。あの頃、両親どちら側の祖父母も健在でしたが、振り返ってみれば、本作のように本気で関わることもしなかった。正月に会えば、少し余分にお年玉をくれてありがたい、そんな程度です。
なぜ、もう少しちゃんと向き合ってこなかったか。両親に対する思いと同様の苦い後悔が祖父母にもあるということを、思いがけず強く自覚した次第です。
やくみつる
漫画家。新聞・雑誌に数多くの連載を持つ他、TV等のコメンテーターとしてもマルチに活躍。
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