『がんばろうとしない生き方』著者:桑野信義/KADOKAWA
『がんばろうとしない生き方』著者:桑野信義/KADOKAWA

『がんばろうとしない生き方』著者:桑野信義~話題の1冊☆著者インタビュー

桑野信義 トランペット奏者、歌手、コメディアン。1957年生まれ。シャネルズを結成してデビュー。後にグループ名をラッツ&スターに改名。『志村けんのだいじょうぶだぁ』で本格的にお笑いの仕事も始める。2020年に大腸がんの宣告を受け、21年に手術を行った。現在はがん寛解に向けて生活改善をしながらミュージシャンとして活動している。
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――2020年9月にステージ3~4の〝大腸がん〟が発覚しました。告知されたときは、どんな気持ちでしたか?


桑野 まず先生に「まだ大丈夫ですよね。間に合いますよね」と尋ねました。先生は少し困った感じで「頑張ってみましょう」と言いました。これは思っていたよりマズイ状況だと悟りました。それと同時に家族のことが頭に浮かびました。これで俺は終わりかと…。翌年4月から始まるラッツ&スターデビュー40周年の全国ツアーのこと、会社、仲間…。気が動転して何が何だか分からず、頭の中が真っ白になりました。


若い頃から大酒飲みで滅茶苦茶な生活習慣でした。今まで大丈夫だったのが奇跡なくらいです。東京ドーム一杯分の酒は飲んでいるでしょうね(笑)。


――抗がん剤の副作用がかなり強かったそうですね。


桑野 抗がん剤初日の前にステロイド入りの薬とオキサリプラチンを投与したのですが、翌日、気が遠くなりトイレでぶっ倒れました。手足の痺れ、異常感覚(手足が氷のように冷たくなる)、味覚が無くなる、冷たい物を飲むと喉が締め付けられるなど、うつろな状態でしたね。

4年後の寛解を目指します

手術後、最初は人工肛門になるのが嫌でしたが、世の中には子供から老人までたくさんの〝オストメイト〟がいて、みんな一生懸命に生きていることを知り「何も恥じることや隠すことはないんだ。堂々と生きてやる」と思うようになりました。だから人工肛門を閉じるときには1人でお別れ会をしました。3カ月の付き合いだったけど、仲良くしてくれてありがとうと。

――現在はオムツをしているとか。


桑野 術後よりはマシになってきましたが、いまだに少し漏らすので、オムツを着用しています。大切な用事があるときは前日から何も食べず、飲み物も最小限に抑えています。64歳から生まれ変わって赤ちゃんからのリスタート。だから自分はオムツをしていることを恥じてはいません。


――がんになって生き方や考え方は変わりましたか?


桑野 抗がん剤を止めたので自己免疫力を上げ、4年後の〝寛解〟を目指しています。当たり前だったことが当たり前でなくなったことで、普通に生きることだけでもありがたいことだと痛感しています。残された人生の〝アディショナルタイム〟で応援してくれた皆さんに恩返しをしたいと思います。


読者の皆さん、健康診断は絶対に受けてください。何も無ければそれでよし。早期発見なら、こんなに苦しまなくて済むのですから。


(聞き手/程原ケン)