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『中年の本棚』(紀伊國屋書店刊:荻原魚雷 1870円)~本好きのリビドー/悦楽の1冊

『中年の本棚』(紀伊國屋書店刊:荻原魚雷 1870円)~本好きのリビドー/悦楽の1冊
『中年の本棚』(紀伊國屋書店刊:荻原魚雷 1870円)~本好きのリビドー/悦楽の1冊 (C)週刊実話Web 

古文や漢文は実生活で具体的に何の役にも立たない「オワコン」だから、これからは子供に教える必要はない。代わりにお金の貯め方や失業保険の取り方、PCスキルを必修にすべき…こんな一見、合理主義の衣をまとったかの暴論が最近ネット上を騒がせたが、この論法でゆくと基礎解析や微分積分も、ついでに「日本史とかマジいらなくね?」なんて展開にもなりそうだ。

偏見を承知で書けば、どうも発想の根底に、〝結婚はコスパが悪い〟などと人前で平気で宣える神経というか、人生の諸事万端が計算で割り切れると勘違いした人種(個人的にはひそかにコスパンマンと命名してひたすら敬遠のみ)の振る舞いに相通ずるものを感じてまこと寒心に堪えない。

彼らの口を借りれば、新聞・雑誌といった紙媒体ばかりでなく、書籍までが、近い将来に消滅するのだそうだから、本書のタイトルでいえば本棚そのものの需要がまずなくなるかも。

信頼に足る羅針盤的ブックガイド

ところが、46歳筆者のごときデジタル原人にとってそうは問屋が卸さない。同年齢の仲間うちには、いまだに毎週『少年ジャンプ』を買う猛者も散見されるが、正直、体力の衰えから読書の速度も格段に落ち、否応なく自分の残り時間を暮夜うっすらと考える瞬間がたびたび訪れるようになった昨今。やはり年相応に味わいたい古典や、目を通しておきたい風雪に耐えた名著を数えると激しく目移りして落ち着けない。食生活に例えるなら、なるべくジャンクな食事を精神上で避けるためにも、信頼に足る羅針盤的ブックガイドが本書だ。

新刊と古本とを自在に往還しつつ、対症療法的に紹介される数々の本のどれにもそそられる。「退屈といふことを知らない。何でも面白い」(尾崎一雄)、そんな老境を迎えられるか…。

(居島一平/芸人)

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