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釣り人気上昇! コロナ禍で活況“3密回避”で大ブーム再来か~企業経済深層レポート

企業経済深層レポート (C)週刊実話Web

去る3月12日、日本マリン事業協会(JMIA)が都内で記者会見を行い、コロナ禍の現在、3密を回避できるマリンレジャーに注目が集まり、特に「空前の釣りブーム」が到来していると説明した。その背景を釣り具店の関係者が明かす。

「コロナ禍で飲食店やカラオケなどはダメづくし。3密が回避できる釣りに注目が集まり、再ブームの気配があります」

「再ブーム」ということは、かつて大きなブームがあったという意味だ。全国紙の経済記者が解説する。

「日本生産性本部が発行する『レジャー白書』によれば、近年の釣りブームの頂点は1999年後半で、当時の釣り人口は2020万人と推測されている。これほどのブームとなった背景には、バブル崩壊後にアウトドアが注目されたことや、木村拓哉や反町隆史らの人気タレントがバス釣りに熱中したことがあります」

しかし、この現象は3~4年後、急速に衰えていく。ブーム衰退の原因としてまず挙げられるのが、平成不況による所得の低下だ。移動体通信の利用料やパソコンといった情報機器購入など、新たに補わなくてはならない出費も増え、釣りに限らずレジャー産業全体が大きな打撃を受けた。

また、バス釣りのイメージダウンが、一過性のブームに乗った人たちの〝釣り離れ〟を加速させたという。

「バス釣りの対象となるオオクチバス、コクチバスが日本の生態系を乱すと名指しされ、一部の心ない釣り人によるバスの〝ゲリラ放流〟も、社会的な問題になりました」(同)

結果、2010年には釣り人口が1000万人を割り、18年には620万人まで落ち込んだ。しかし、一部の釣り人やメーカーは、環境問題に配慮しながら釣りの普及に取り組み、地道な活動が実を結んで釣り市場は徐々に上向きとなってきた。

トップブランドが過去最高益を更新!

その兆候は若者や女性の姿が釣り場に目立つほか、釣り具メーカーの業績にも表れている。釣り具業界の関係者が解説する。

「現在、世界トップクラスの釣り具メーカーといえば『グローブライド』(東京都東久留米市)です。一般には聞きなれない社名だが、同社の前身である『ダイワ精工』と聞けば知っている人も多いはず。そのグローブライドは、21年3月期通期の経常利益が63億円、前期比2.0倍と公表した。この数字は93年の過去最高益を28期ぶりに塗り替えるものです」

グローブライドはベトナムで、敷地面積約4万平方メートルの新工場を建設している。同社によれば約20億円を投じ、22年前半の稼働を目指すという。経営コンサルタントが解説する。

「グローブライドは03年からベトナムに進出しており、工場はベトナムで3つ目。日本で釣りブームが去った後、同社はベトナムで作った製品を世界展開し、国内不況の穴を埋めてきた。しかし、新工場建設は攻めの経営戦略で、完成すれば釣り具などの生産能力を約1割高めるという」

また、国内釣り具業界では『シマノ』(大阪府堺市)も絶好調だ。

「シマノは21年12月期の営業利益が1050億円と、15年の過去最高益を更新する見通しだ。同社は世界トップの自転車メーカーとしても知られ、感染リスクの低い交通手段として飛躍的に需要が高まった。そして、力を入れてきた釣りも、アウトドアレジャーとして見直され、業績が伸びたのは当然とも言える」(同)

ポケモンルアーに注文殺到!

今回の釣りブーム再来を支えるのは、グローブライドやシマノといった世界的ビッグブランドだけではない。例えば、静岡県焼津市の釣り具メーカー『DUO(デュオ)』は、人気ゲーム『ポケットモンスター』のキャラクターをデザインしたルアーを発売したところ、注文が殺到して数日で完売したという。前出の釣り具業界の関係者が言う。

「同社は創業当時から、国内生産と独自のデザインにこだわってきた。その釣り具への仕事ぶりは、国内だけでなく世界的にも熱烈なファンに支持されています。今回のポケモンルアーも、デザイン性と機能性の両立にこだわり、開発期間はルアー商品としては異例の2年半に及んだ。部品はすべて日本製で、組み立てや塗装は焼津市で行い、1個ずつ手作業で仕上げている」

こうした実直なメーカーが、日本の釣り産業のすそ野をしっかりと支えているからこそ、今日の釣りブームの再来があるのだろう。

しかし、釣りブームの一方で、トラブルも再発している。例えば、漁船のロープに釣り針が残されていたり、釣りをしながら夜通し港で酒盛りをしたり、こうした狼藉に立ち入り禁止区域も設定されるほどだ。釣り愛好家が警告する。

「90年代の釣りブームが終わった一因には、マナー違反や環境に配慮しない人たちの無責任な行動がある。釣りブーム再来で浮かれるばかりでは、同じ轍を踏むことになります」

コロナ禍で活況となった釣りブームだが、末永く楽しめるレジャーとなれるかが問われている。

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