まだまだ出口の見えないコロナ禍の中で、比較的好調といわれているのが自動車業界である。
不特定多数の人と乗り合う電車やバスといった公共交通機関に対する不安や、飲み会や家族旅行などが減ったために家庭内の貯蓄率が高まっているなど、諸説飛び交っているが、有力な理由の1つとして挙げられているのがローンの多様性だ。
「自動車購入といえば、従来は現金一括払いが圧倒的に多かった。しかし、最近はローンを利用した新車購入が全体の6割ほどに高まってきています」(都内のディーラー)
そんな自動車購入ローンの中でも主流となっているのが、数年後の下取り予想価格をあらかじめ設定し、その分を差し引いた金額を分割返済する「残価設定ローン」だという。
「残価設定ローンは、下取り価格分は月々の支払いに掛からないので、一見安く見えます。近年の自動車は、自動運転技術の進歩や燃費に関わる環境性能の充実を背景に価格が上昇していることから、ディーラーも買い替えを提案する際には、残価設定ローンを前面に出し、毎月の負担の少なさをアピールせざるを得ないということもあるのでしょう。また、従来現金一括払い派の人たちもコロナ禍という非常時において、少しでも手元に現金を置いておきたいという気持ちになっていることも理由として挙げられます」(自動車ジャーナリスト)
残価設定ローンの〝落とし穴〟にご注意を
年末や年度末になると、各メーカーで残価設定ローンの特別低金利を売りとしたキャンペーンが実施され、自動車そのものの魅力よりも金利の安さをアピールしている広告なども目に付くほどだ。
ただし、残価設定ローンには〝落とし穴〟があるという。
「月々の支払いが抑えられ、高額な自動車の購入をし易くしていますが、設定通りの残価で買い取りをしてもらうには、走行距離や傷の大きさなどの細かい制限があります。下取り価格が想定していた金額にならず、その分新たな負担を抱えるなんてこともあります」(同・ジャーナリスト)
こうした残価設定ローンでの購入に慣れた消費者は、自動車を所有するために毎月一定額を支払うことに違和感を抱かなくなっており、サブスクリプションなどの新たな販売方法にも、すんなり移行する傾向にあるという。
「自動車業界は、ガソリンから電動化、自動運転の進歩など、100年に一度といわれる変革の時代を迎えています。1台を大事に乗るより、定額制でどんどん乗り換えて、先進技術を体感するのもありですよ」(同)
技術同様、販売方法も大きな転換点を迎えた自動車業界。われわれユーザーも、自分の収入やライフスタイルにあった買い方を選べる時代になったということだ。
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