
緊急事態宣言が解除されたとはいえ、コロナの猛威に対する出口は見えない。一方で、政府・知事をはじめ分科会やさまざまな専門家など、「船頭」は多いが、解決への舵取りをしてくれるわけでもない。国民が学ぶべきは、日本が疫病とどう関わってきたか、その歴史ではないか…。
そう問いかける1冊が、『病気の日本近代史 幕末からコロナ禍まで』(小学館/税込1320円)だ。著者は歴史家の秦郁彦氏。2011年刊行の同名単行本を加筆した新書で、医療専門家によるものではなく、現代史家が執筆した点がミソだ。
“疫病との戦史”を綴った内容
医療の歴史とは、「脚気、伝染病、結核、がんなど難病の制圧をめざす国家的な総力戦の過程でもあった。それは人間の生死をめぐって運と不運、喜びと悲しみが交錯するドラマでもあった」(あとがきより)と著書は言う。人は疫病と総力をあげて戦い、多くの者たちを失ったが、最後には勝利してきたではないか…と史実を綴った内容なのである。
感染症がウイルスの仕業であることが判明してから200年足らずであること、太平洋戦争ではマラリアとの戦いが日米の明暗を分けたこと、日本人が脚気に悩まされた理由など、疫病による悲劇と挫折が繰り返されてきたことを伝えている。新章として加えた「新型コロナ禍の春秋」では、それでも解決する日は来ると、希望をもって締めくくる。
解決へ導いているようで、危機感をあおるだけに終始するリーダーたちの言葉より、参考にすべき点は多い。
(小林明/編集プロダクション『ディラナダチ』代表)
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