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『ティラピア』~沖縄県沖縄市/泡瀬の水路産~日本全国☆釣り行脚

ティラピア釣り
ティラピア釣り (C)週刊実話Web

前回は、沖縄市内のドブにて水面を割って逃げ惑う小魚(ボラの幼魚)の群れに遭遇し、その正体を確かめようとスプーンと呼ばれる疑似餌を投入。犬の散歩のように水路沿いを歩きながらスプーンを引っ張っていたところ、メッキ(ギンガメアジの幼魚)がヒット。

結局、釣れたのはその1尾のみ。小魚を追いかけ回していたのはもっと大きな魚だと思われますが、不慣れな疑似餌の釣りで手にした釣果は、喜びもひとしおでした。

サイズはともかく、とりあえず釣果を手にしたことでワタクシの興奮もひと段落。あらためて、当初のお目当てだった〝チン〟をエサ釣りで狙うことにします。〝チン〟とはミナミクロダイのことでして、見た目は内地で釣れるクロダイとほぼ同じ。生息環境もそっくりで、港湾や河口の汽水域といった、人間の生活圏内の水辺まで入り込みます。ですから、市街地を流れるドブからでも十分に可能性のあるターゲットなのです。

それまで結んでいたスプーンを外し、ハリの上に小さなオモリを噛み付けたシンプルな仕掛けを結びます。これにエサを付け、水路の護岸際に静かに沈めていく、「フカセ釣り」と呼ばれる釣り方で探っていきます。この壁際狙いのフカセ釣りは、仕掛けがシンプルな分だけエサが自然に漂うので、警戒心が強いチンもたまらずパクッと食らいつく、というもくろみです。

エサをしかけたらテンポよく探る
エサをしかけたらテンポよく探る (C)週刊実話Web

そ~っと仕掛けを沈め、時折軽く誘い上げてはまた横に移動して落とし込む。港湾と違ってドブ水路は浅いため、テンポよく探っていきます。

攻防の相手は更なる南方系!?

探り歩くこと数メートル、沈めていく仕掛けに何となく違和感を覚えました。もう何か食いついたのか!?

ひと呼吸置いてから、静かにゆっくりと引き上げると、「ククンッ!」と明らかな魚信が伝わり、反射的に鋭く竿を煽ると、安物竿がグンッと絞り込まれました。よし、掛かった!

思いのほか力強い手応えに良型を確信。糸を送りながら慎重にヤリトリします。それにしても、メッキといい、チンといい、こんなに早く結果が出るとは…。

「さすがは沖縄! 名もなきドブでもポテンシャルが違う♪」

そうひとりごちて、機嫌よく攻防を楽しみます。やがて「バシャッ!」と一瞬だけ水面に躍り出た魚は、鯛のようなシルエットに黒っぽい魚体…。濁った水底に再び突っ込んでいきます。相手はやはりチンのようです。

愛用の安竿はギシギシときしみ、糸もキンキンに張っています。食わせることを重視して細仕掛けを使っているため、念のため玉網を用意して魚が浮き上がるのを待ちます。このドキドキ感がタマランのです。

何度となく、重く力強い突っ込みを慎重にかわし、無事に取り込みに成功。護岸に引き上げた魚は…、チンにしてはヒレがちょっと派手なような…。

ティラピア 
ティラピア (C)週刊実話Web

ハラハラしながらヤリトリをしていた相手は、狙いのチンではなくティラピア。そういえば、沖縄の河川にはコイツがいるんでしたな。忘れていましたわ…。

悲運な外来魚は意外と旨い!

さて、このティラピアという魚、明らかに舶来な雰囲気の名前からも分かるとおり、元来、日本に生息する魚ではありません。アフリカ原産の外来魚で、かつては国内でも『イズミダイ』の名前で流通、養殖が行われておりました。しかし、思ったほどは売れず、水産関係者の間では残念な印象が強い魚でもあります。

成長の速さと繁殖力の強さから台湾、マレーシアなど温暖な地域で盛んに養殖されており、かつては沖縄でも養殖されておりました。そこで育てられていた個体が脱走したようで、沖縄では多くの河川で繁殖してしまっています。雑食性で食欲旺盛、水質の悪い環境下でも成長&繁殖するという〝スゴイ魚〟ゆえ、沖縄では一番身近で簡単に釣れる魚という位置付けですが、地元の人は食用のターゲットとは見ていないようです。

ティラピアの香草焼き 
ティラピアの香草焼き (C)週刊実話Web

今回はこのドブ育ちのティラピアを香草焼きにしてみました。臭いがキツいかなと覚悟して口に運びましたが、意外や美味。試しに「皮付き」と「スキンレス」の2種類を比較しながら食べたのですが、どちらも美味しく、心配された皮目の臭みも感じられません。むしろ香ばしさと旨味さえ感じました。

生活廃水がバンバン流れ込む環境に生息しながらこの旨さ。やはり〝スゴイ魚〟なのかも…。

三橋雅彦(みつはしまさひこ)
子供のころから釣り好きで〝釣り一筋〟の青春時代を過ごす。当然のごとく魚関係の仕事に就き、海釣り専門誌の常連筆者も務めたほどの釣りisマイライフな人。好色。

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