(画像)Alan Tan Photography/Shutterstock
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プロ野球選手会“FA6年”を要求か!? 海外進出選手増加もやむを得ない切実な背景

ヤクルト・村上宗隆、オリックス・山本由伸の〝夢のメジャーリーグ挑戦〟が大きく前進した。労組・プロ野球選手会が「フリーエージェント(FA)6年短縮案」を決議し、日本プロ野球(NPB)側に提案。早ければ、先の2人が来オフにも海を渡る可能性が浮上し、球界に衝撃が走っている――。


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労組・プロ野球選手会(會澤翼会長=広島)がオールスターゲームの中断期間中にオンラインで臨時大会を開き、現行の「国内FA8年、海外FA9年を一本化し、6年に統一」案をNPBに緊急提案した。


この動きについて、スポーツ紙デスクが解説する。


「FA6年はメジャーリーグ(MLB)に合わせるもので、突拍子もない要求ではない。プロ野球選手の稼げる〝旬〟は短く、ヤクルトの村上宗隆内野手、オリックスの山本由伸投手らの早期のMLB挑戦を支援するのが狙い。オーナー側は反対しているが、持続可能な球団経営を続けていくには一考に値するという肯定的な意見もあり、そう遠くない時期に変更になるのではないか」(スポーツ紙デスク)


MLBのトレード期日である8月3日が過ぎた今、がぜん注目を集めるのが、「サダハル・オー」を超えた村上だ。


7月31日の阪神戦(甲子園)から8月2日の中日戦(神宮)にかけてプロ野球史上初の5打席連続本塁打を記録。アメリカでも「世界のホームラン王、王貞治氏(ソフトバンク球団会長)でも達成できなかった大記録」と報じられ、村上の知名度と評価が急騰した。


「昨年の東京オリンピックで4番を務めた鈴木誠也(28、当時広島)は今季からポスティングシステム(PS)でシカゴ・カブスに移り、5年総額約101億円、平均年俸20億円超で契約しました。MLBのスカウトからは、鈴木との相対評価として村上に対し『単年23億円』の声が出ています」(ヤクルト担当記者)

年俸バランスの混乱回避にも

村上の今季年俸2億2000万円(推定、以下同)は、入団5年目としてはイチローや松井秀喜を抜いて史上最高額。しかも8月15日現在、ホームラン41本と100打点は独走状態。打率3割2分もリーグトップの佐野恵太(DeNA)に5厘差。2年連続の優勝とMVP、令和初で18年ぶりの三冠王達成となれば、MLBの評価には遠く及ばないものの、来季の4億円、いや、5億円超えも夢ではない。


「これが海外FA権取得まで昇給し続ければ、球団の金庫はいずれ限界になります。しかも、このままいくと今オフには、村上の師匠である山田哲人の年俸5億円を弟子が上回り、ゆがみが生じてしまう可能性も…。〝ファミリー〟が売りの球団だけに、チーム内の年俸バランスに苦慮しているのです」(同)


現在のNPB最高年俸は、ヤンキースで活躍した田中将大(楽天)の9億円。以下、柳田悠岐(ソフトバンク)の6億2000万円、千賀滉大(同)、坂本勇人(巨人)、菅野智之(同)の6億円と続く。村上の急激な年俸アップは衝撃も大きく、「FA6年案」は球界の〝混乱回避策〟でもある。


昨季投手四冠(最多勝・最優秀防御率・奪三振・最高勝率)と沢村賞&MVPを獲得し、パドレスのダルビッシュ有が「余裕でMLBで通用する」と太鼓判を押すオリックスの山本にしても、今季年俸は3億7000万円にとどまっている。


ところが、西武から米マリナーズにPSで移籍し、今季ブルージェイズに移った菊池雄星投手の今季年俸は1600万ドル(約21億円)。実績、若さとも上回る山本がMLB入りすれば、それ以上に評価されるのは確実だ。しかし、縛りがあって現状では海を渡れない。


球団の了承を得てPSでMLBへ転身するルートもあるにはあるが、「日米球界の国際FA協定」という大きな壁がある。「25歳未満、日本プロ野球在籍6年未満選手」はMLB入りしても、マイナー契約しか結べず、年俸は最大54万5000ドル(約7000万)に制限される。


この「壁」に敢然と挑んだのが、当時23歳、プロ5年目の大谷翔平だった。日本ハム時代の年俸2億7000万円を捨て、70%以上カットの約6000万円(当時のレート)でエンゼルスに移籍したのだ。

迫る各選手の満了“Xイヤー”

こんな無鉄砲ができたのは、自信の裏返しと言える。6年後にFA資格を得れば、各球団で「二刀流争奪戦」が起こり、必ず帳尻が合うと確信していたからに違いない。


実際、昨年の契約見直しで年俸は約5億7000万円にアップし、来年オフにFA資格を得れば、マックス・シャーザー投手(メッツ)の約4333万ドル(約59億円)を抜いて、史上最高年俸到達が確実になっている。


「ただ、大谷がPS移籍した当時(2017年)の協定では、契約金にかかわらず、日本ハムに対して2000万ドル(約22億円)の譲渡金が支払われたが、その後の協定見直しで譲渡金は選手年俸の25%に変更され、球団のうま味は激減した。各球団は26歳以下の選手のPS移籍は認めなくなり、大谷のようなケースはもはやあり得なくなっている」(在日本のMLB代理人)


そこで「海外FA権利獲得の短縮」なのだ。とりわけ2017年のドラフト会議で1位入団した村上の場合、最初のシーズンに三塁へコンバート(九州学院高校時代は捕手兼一塁手)され、「1軍登録145日で1年」の条件を満たしていない。この1年が村上に重くのしかかり、それは今後も続く。


球団からすれば、「取られ損」となるFAによるメジャー移籍より、高額な譲渡金が入る25歳を満了してのPS移籍を歓迎するのは当然だ。それを考えると、FA資格獲得のその前年が「Xイヤー」となる。


早生まれで22歳の村上は2025年の年明け早々、8月17日に24歳を迎えた山本は来年23年オフが最短の「Xイヤー」となる。選手会の後押しで、日本球界の投打の王者がMLB転身に向けて大きく前進した。