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蝶野正洋『黒の履歴書』~「IWGP世界ヘビー級王座」の新設

蝶野正洋『黒の履歴書』
蝶野正洋『黒の履歴書』 (C)週刊実話Web

新日本プロレスのベルトについて、議論が巻き起こっている。

まず、新日本プロレスの最高峰のベルトに位置づけられる「IWGPヘビー級王座」のチャンピオンと、そもそもは海外向けタイトルとして立ち上げられた「インターコンチネンタル王座」の保持者が試合を行い、勝ったほうが2冠王者となる。以降のタイトルマッチは、この〝2冠〟を争って行われてきたが、今度はこの2つのベルトを統一することになった。

問題は、統一した後のタイトルが「IWGP世界ヘビー級」という新たな名称になり、2つのベルトが事実上〝封印〟されてしまうことにある。

ファンからは「いままでのIWGPヘビー級王座の歴史をリセットしてしまうのか」という否定的な声が多く、関係者や所属選手の間でも意見が割れている。

選手の気持ちは、分からないでもない。いままでIWGPヘビー級王座を取ること、歴代王者の中に自分の名前が刻まれることを目標としてきたレスラーも多いからな。

歴代王者として俺の名前も記録されている。そんな俺からすれば、これは仕方がないというか、それほど大騒ぎすることでもないと思う。

そもそも、ベルトやタイトルなんていうのは、選手のためじゃなくて会社側が勝手に制定するもの。つまり、興行的に必要だからベルトを作るだけであって、そこに思い入れなんてないんだよ。

「IWGP」というのも、そもそもは(アントニオ)猪木さんが世界最強の男を決めるという考えをもとに開催されたリーグ戦で、それがいつのまにかベルトになっただけ。他にも統一されたり、なくなったベルトなんてのはたくさんある。

ベルトの価値は試合でつくり上げていくしかない

会社が制定するという意味では、新日本プロレスの運営会社がブシロードに変わった時に「これからベルトの名称は『ブシロードGP』にします」と言われてもおかしくなかった。そういう意味では、ブシロードとしては「IWGP」という名前を尊重しているし、歴史に対しても敬意を払っているといえる。

ただ、どんなタイトルでも、そこに価値を見い出していくのは選手側。新しいベルトを活かすも殺すも、これからの試合でつくり上げていくしかない。

最近、辞退者が続出している聖火ランナーも似たような構図だよ。

芸能人の多くが、日程の都合がつかなくなったという理由で聖火ランナーを辞退しているけど、あれは単純に仕事の優先順位が下がったってことだよね。

3年前は、東京オリンピックの聖火ランナーに抜擢されたというのは栄誉なことだし、何よりも優先するべきことだった。でも、今はやるか分からないオリンピックに関わることがリスクだと思われてしまう。

要するに、聖火ランナーの意味が変わってしまったということなんだけど、逆にここで価値を見い出せるかどうかは、走る側に委ねられてるんじゃないか。

もし、俺のところに聖火ランナーのオファーがきたら受けるかだって? いま腰を痛めていてまともに走れないから、先に断っておく。

ゆっくり歩く「聖火ウオーキング」なら、考えてもいいよ。

蝶野正洋
1963年シアトル生まれ。1984年に新日本プロレスに入団。トップレスラーとして活躍し、2010年に退団。現在はリング以外にもテレビ、イベントなど、多方面で活躍。『ガキの使い大晦日スペシャル』では欠かせない存在。

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