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アニマル浜口「負けたー!」~一度は使ってみたい“プロレスの言霊”

アニマル浜口「負けたー!」
アニマル浜口「負けたー!」 (C)週刊実話Web

「気合だー!」のセリフですっかり有名になったアニマル浜口。現役時代のファイトスタイルは、アントニオ猪木が若手に「あいつを見習え」と言ったほど、闘志に満ちていた。ジャイアント馬場からも高評価を得る名レスラーであった。

1986年3月13日、全日本プロレスの日本武道館大会で、全日軍と長州力率いるジャパンプロレス軍との6対6全面対抗戦が実現した。

同年2月5日、北海道・札幌中島体育センターで行われたインターナショナル・タッグ選手権。王者ジャンボ鶴田&天龍源一郎に長州力&谷津嘉章が挑戦した試合において、谷津がジャーマン・スープレックス・ホールドで天龍からフォール勝ち、王座を奪取したという経緯もあって、まず最初に天龍と谷津の対戦が決まった。

他の試合については同年3月1日、秋田県立体育館大会のリング上において、全日側の出場選手の名前が書かれた色紙を裏返しにして並べて、それをジャパン側が順に引いていくという抽選方式が取られた。そこで決まった全カードと試合順、さらに勝敗は以下の通り(上が全日側。○=勝ち、×=負け、△=引き分け。試合時間はいずれも30分)。

第1試合/○サムソン冬木VS栗栖正伸×
第2試合/△石川敬士VS小林邦昭△
第3試合/×マイティ井上VSキラー・カーン○
第4試合/○ジャンボ鶴田VSアニマル浜口×
第5試合/×タイガーマスクVS長州力○
第6試合/△天龍源一郎VS谷津嘉章△

事前の発表では7対7の対抗戦とされており、抽選時には「ジャイアント馬場vs寺西勇」のカードも発表されたが、これは寺西の負傷欠場を理由に行われていない。

ジャイアント馬場も「油断はできない」と…

仮に馬場と寺西の試合が実現していた場合、レスラーとしての格付けからして馬場の負け、もしくは引き分けもあり得ず、馬場の勝利は確定的。そうなると両軍の勝敗が合わないため、馬場が対抗戦に出場しないことは、既定路線だったのかもしれない。

それはともかく、初の全面対抗戦ということでいずれの試合も大いに盛り上がったが、中でも際立って強烈なインパクトを残したのが鶴田と対戦した浜口であった。

公称でも身長178センチとヘビー級としては小柄で、鶴田との身長差は約20センチもある。まるで大人と子どものような体格差で、全日のエースでもある鶴田の勝利は確実というのが、大方の見方であった。リング上で鶴田の名前がコールされた際には、実況担当の倉持隆夫アナも「負ける要素は何もありません!」と評している。

これに対して解説の馬場は、「負ける要素は何もありませんと言いましたけどね、そうすると浜口には勝つ要素が何もないということになりますけど…」と反論。ゴングの直前、コーナーに向かって背を向けた鶴田に浜口がドロップキックで仕掛けていくと、「これだけのファイトがあるんですからね、油断はできませんよ」と続けた。

辛口解説で知られた馬場が、こうした物言いをするのは珍しく、それだけ浜口のことを高評価していたというわけだ。

浜口に敬意さえ感じていた鶴田

さて、試合では馬場の言葉に応えるように怒涛の攻撃に出た浜口だったが、とはいえ「鶴田危うし」とまでは至らず、ジャンピング・ニー・パッドの一撃ですぐさま攻守逆転となる。しかし、それでも浜口の闘志は衰えることなく、得意のエルボーやグラウンドでの関節技などで執拗に食らいついていく。

鶴田はそんな浜口に業を煮やしたかのように、当時としては珍しく顔面への踏みつけやジャンピング・アームブリーカー(馬場が上田馬之助戦で披露したのと同タイプ)などの拷問技を繰り出し、スタンディング状態で浜口に片脚を取られた際には、まさかの延髄斬りまで放ってみせた。

フィニッシュへの過程もジャンボ・ラリアットに始まり、コーナートップからのジャンピング・ニー、フライング・ボディシザース・ドロップとつなぎ、強豪外国人と対するときのような必殺技のフルコースで勝利を収めたのだった。

格上相手に一切ひるむことなく突進していった浜口と、これにフルパワーで応じた鶴田。

「ジャンボはプロレスがうまかったから、試合をしていて〝こいつ、駄目だな〟と思ったら、まともに相手にしないっていうか、馬鹿にしちゃう」

というのは、後年の谷津による鶴田評。そうしてみると、この時の鶴田は浜口を馬鹿にするどころか、逆にある種の敬意のようなものを抱いていたのだろうか。

試合後、リングに残った浜口は、日本武道館の天井を仰いで、「負けたー!」と絶叫。そのすがすがしいばかりの姿に、ファンからは惜しみない拍手と歓声が送られたのだった。

この魂の叫びは、1990年に浜口が新日本プロレスに参戦した際、長州を叱咤した「燃えろー!」を経て、2004年のアテネ五輪で娘の浜口京子に向けて連呼し、同年の流行語大賞トップテンにも選ばれた「気合だー!」へと引き継がれることになるのだった。

《文・脇本深八》

アニマル浜口
PROFILE●1947年8月31日生まれ。島根県浜田市出身。身長178センチ、体重103キロ。 得意技/ジャンピング・ネックブリーカー・ドロップ、エアプレーン・スピン。

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