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日本全国☆釣り行脚~『ギンガメアジ』~沖縄県沖縄市/泡瀬の水路産

日本全国☆釣り行脚~『ギンガメアジ』~沖縄県沖縄市/泡瀬の水路産
日本全国☆釣り行脚~『ギンガメアジ』~沖縄県沖縄市/泡瀬の水路産 (C)週刊実話Web

春は名〜のみ〜の〜風の寒さや〜…。

こんなフレーズがあるように、春になったからと言って、必ずしも温暖が約束されたわけではありません。まだ風は冷たいですし、水の中に至っては、まだ冬が色濃いタイミングであります。ですから、ワタクシの釣りも水中と同じくお寒い釣果になりがちでして、毎年、この時期は悩ましい日々をすごしているわけでございます。

で、目を付けたのが南国・沖縄。夏場のハイシーズンと比べれば釣れない時期ではありますが、あまり欲を出さなければそれなりに楽しめます。

ただ、釣り場選びには厳選が求められます。ほかよりも水温が高く、水中の栄養や酸素が豊富な場所…。

そうです。ドブです。

度々申し上げておりますが、ワタクシはドブ嗜好が極めて強い重度の「ドブ専」でして、珊瑚礁とコバルトブルーの「美ら海」よりも、生活排水臭が漂う「はごー(汚い)ドブ」に萌えるのであります。しかも、南方系のドブは生物層がより豊富だったりしますからねぇ。

ということで、本島中部にある沖縄第2の都市、沖縄市にやって参りました。目を付けたのは、泡瀬地区の住宅街を流れる名もなきドブ川。もちろんほかに釣り人の姿はありません。「当たり前だろ!」とツッコミが入りそうですが、こと沖縄に関してはさにあらず。当地において、「ドブ」は魚が濃い場所として近年定着しており、竿を出す釣り人が結構いるのです。それを裏付けるように、この釣り場にも「釣り人のみなさんへ ゴミは持ち帰りましょう」という手書きの看板がありました。

泡瀬地区の住宅街を流れる名もなきドブ川
泡瀬地区の住宅街を流れる名もなきドブ川 (C)週刊実話Web

慣れぬ疑似餌にガツンと銀鱗

「さ~て、チン(ミナミクロダイ)でも狙おうか」

のんびりと準備を始めていたところ、水面に群れるボラの幼魚が一斉に「ザザッ!」と逃げまどう音が度々聞こえてきます。こんな様子を見てしまったらもう、釣り人としては辛抱たまりません。チンやマン(?)はいったん置いておいて、ボラの幼魚を追いかけている魚の正体を確かめることにします。

んが、普段はエサを使う釣りばかりの身ですから、ルアーなど持ち合わせておりません。とりあえず代用品を探して、ダメ元で道具箱をガサゴソすると、スプーン(金属片でできたルアーの一種)がありました!

スプーン(金属片でできたルアーの一種)「コレで勝負するしか…」
スプーン(金属片でできたルアーの一種)「コレで勝負するしか…」 (C)週刊実話Web

「コレで勝負するしか…」

準備途中の安竿にスプーンを結び付けて投入。適当に竿を煽って水中でスプーンを踊らせてみます。しかし、ヘタクソの付け焼き刃なルアー釣りで、簡単に釣れるほど甘くはありません。

そこで作戦変更。ドブ水路にスプーンを放り込み、チョンチョンと小刻みに誘いながら水路沿いを歩いてみます。「投げてダメなら歩け!」作戦です。

歩くことしばし。2往復目に差しかかったところで、「グンッ!」という抵抗が加わりました。半信半疑で竿を煽ると「キュキュ~ンッ!」と竿が絞り込まれます。鋭い手応えで釣れ上がったのは〝メッキ〟と呼ばれるギンガメアジの若魚でした。ドブ万歳!

ギンガメアジの若魚
ギンガメアジの若魚 (C)週刊実話Web

やっておいて言うのもアレですが、まさかこんなにすぐ釣れるとは…。ルアー釣りが初心者のようなワタクシにも釣れてくれるあたり、「さすがは沖縄のドブ!」といったところでしょうか。

幅広なフライは旨いけど臭う…

このギンガメアジ、30センチくらいまでの若魚は〝メッキ〟と呼ばれ、河口内や漁港で手軽に狙えるルアー対象魚として人気があります。内地でも黒潮にのって回遊した稚魚が晩秋~冬場に狙えるため、ルアー愛好者から人気がありますが、内地では冬を越せず、大きく育つことはまれなようです。

さて、さすがにドブ産魚なので生食は気が進みませんから、パン粉をまぶしてフライにしましょう。

ギンガメアジのフライ
ギンガメアジのフライ (C)週刊実話Web

その偏平な体型から幅広なアジフライとなりましたが、見た目には何とも旨そう。ガブリと頬張ってみると、アジ科らしい旨味が広がります。

ん…? アレ…? なにか後味が…。

時間差で鼻腔の奥を刺激したのは少々の生活排水臭。まぁ、棲んでいる場所がアレですからね。これもドブ専釣り師が背負った宿命なのです。決して魚自体がマズいわけではありません。

濃い香りと酸味に富んだ『オリオン75』をあおりつつ思い出すのは、いきなり引ったくられるルアー釣りならではの手応え。その感触を思い出しながら楽しむ晩酌でありました。

三橋雅彦(みつはしまさひこ)
子供のころから釣り好きで〝釣り一筋〟の青春時代を過ごす。当然のごとく魚関係の仕事に就き、海釣り専門誌の常連筆者も務めたほどの釣りisマイライフな人。好色。

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