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楽天がアマゾン超えの勝負!~森永卓郎『経済“千夜一夜”物語』

森永卓郎『経済“千夜一夜”物語』
森永卓郎『経済“千夜一夜”物語』(C)週刊実話Web

3月12日に楽天が第三者割当増資で2400億円の資本を調達すると発表した。出資は日本郵政が1500億円、中国ネット大手のテンセントが650億円、米小売大手のウォルマートが165億円、そして、三木谷浩史社長自身も、個人会社を通じて50億円を出資する。

楽天が会社創立以来、最大となる資金調達に打って出たのは、楽天モバイルの基地局建設を中心とする投資のためだ。昨年春に自社回線による携帯電話事業に参入した楽天は、新規加入者に対する1年間無料や通信量無制限、最近では、通信量が1GBまでは無料という戦略的な料金プランを設定して、当初目標の300万加入を達成した。

しかし、問題はこれからだ。楽天が割り当てられた電波は直進性が強く、大手3社が利用しているプラチナバンドと比べると、多くの基地局を建設しない限りフルカバーが難しい。私も楽天モバイルを契約して使っているが、大都市では問題なくつながるものの、地方やビルの中などではつながりにくい場所が残されている。基地局を大幅に増やして早く大手3社並みにしないと、1年間無料キャンペーンで獲得した顧客が離れてしまう可能性が高いのだ。

最大の出資者である日本郵政は、楽天株の8%超を保有する大株主となる。形式的には楽天が日本郵政の軍門に下ることになるが、メリットが大きいのは楽天のほうだ。基地局の建設には用地の確保が最大の課題となる。楽天はすでに全国400カ所の郵便局に基地局を設置しているが、郵便局は全国に2万4000局もあるから、楽天は今後の基地局建設に向けて大きな自由度を得たことになる。また、販売店数で大きな後れをとっていた楽天が、郵便局という販売拠点を得たことは、ネットに強くない中高年層への浸透を図るうえで大きな力になるだろう。

一気にグローバル企業へ!

さらに、私は本業の楽天市場にも大きなメリットがあるとみている。楽天市場の最大の弱点は送料だ。アマゾンの場合は、2000円以上の買い物で送料が無料になる。年間4900円を支払ってプライム会員になれば、2000円未満の商品でも無料だ。これに対して楽天市場は3980円以上で送料無料になるが、対象となる店舗は全体の7割程度にとどまっている。

アマゾンが安い送料を実現できているのは、自前の物流網を構築していることが大きい。楽天も取り組んではいるが、物流網の構築はそう簡単ではない。その点で、資本関係を持った日本郵政と提携を強化すれば、物流コストを一気に引き下げることが可能になる。

現に日本郵政と提携しているメルカリでは、専用箱使用で重さ2キロ以内の「ゆうパケットポスト」を200円という低価格で提供している。しかも、全国均一料金だ。楽天は日本郵政の物流網を活用して、もっと安い送料を実現できる可能性が出てきたのだ。

テンセントとの資本提携では、デジタルエンタテインメント分野で大きな成果が見込まれる。イメージとしては、アマゾンのプライムビデオやプライムミュージックのようなものだ。そして、ウォルマートとの資本提携もネットスーパー事業の拡大に貢献するだろう。

昨年12月期決算で1142億円の最終赤字を計上した楽天が、逆転攻勢への号砲を鳴らした。一気にグローバル企業に成長するきっかけになるかもしれない。

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