偉大な記録の前で、ちょっと足踏み…。しかし、阪神のドラフト1位ルーキー、佐藤輝明選手の実力はホンモノと見て間違いない。セ5球団が「対阪神のキーマン」として〝上方修正〟を始めたのだ。
「ドラフトで4球団が競合したスラッガーです。『将来性は認めるが、1年目からの活躍は無理』と厳しい見方をされていました。あのパワーはホンモノ。左バッターに不利と言われる甲子園球場で、今季、25本から30本くらいホームランを打つかもしれない」(ライバル球団スタッフ)
次世代の「スター候補」と言ってもよさそうだ。
佐藤の魅力はホームラン。〝野球の華〟であり、素人が見ても分かりやすい。その誰よりも遠くに飛ばすパワーがスゴイのだ。
丸太のように太い腕、ごつい体付きから生み出される〝ゴリラのようなパワー〟で、誰よりも遠くに打球を飛ばしている。
話は2月16日の練習試合(対楽天)にさかのぼる。
「バットが折れたのに、打球は右翼ファールゾーンの柵を優に超えて行きました」(在阪記者)
佐藤はフルスイングのあと、折れたバットのグリップ部分を持って、空を見上げている。推定飛距離は100メートル。〝ゴリラパワー〟に、球場中に「ウォ~」のどよめきが轟いた。
「仁川学院高時代から4番の中核選手でした。でも、当時の体重は65キロ。さらに『上』を目指すためにウエートトレーニングを始め、卒業する頃には80キロ以上のたくましい体付きになっていました」(アマチュア野球担当記者)
父親は柔道で全国大会にも出場した猛者。筋トレでマッチョになり、父のDNAが近畿大学で覚醒した。
「苦労する」の評価をアッという間に覆す!
佐藤はオープン戦で6本塁打。これは、ドラフト制度以降の新人最多記録で、さらに「あと1本」出れば、スーパースターの長嶋茂雄氏の7本に並んだ。
「彼の出身高校は、国公立大にたくさんの現役合格者を出す進学校。単にブンブン振り回すのではなく、考えながら野球をやっているように見えます」(同)
キャンプ初日でのことだ。阪神のお膝元でもある関西系メディアは「パワー全開」と伝えていたが、本人を見る阪神OBやプロ野球解説者の評価は、実は低かった。遠くに飛ばすことを意識しすぎたのか、佐藤のスイングはアッパー気味で、「こりゃあ、苦労するゾ」とボヤいていたのだ。
ところが、翌日の佐藤は別人になっていた。
「スイングがシャープになっていました。しかも、前日の不格好な打撃練習を注意されたのかと思ったら、自分で気付いたそうです。プロの先輩たちの打球を見て、無意識に力が入っていたんでしょう。さらに、先輩たちのティー打撃を見て、各選手の長所を的確に言い当てていたそうです。その長所を模倣し、フリー打撃での失敗に気付いた、と。並みの新人ではありません」(球界関係者)
3月7日に行われたソフトバンクとのオープン戦で、ベテランの和田毅に2三振、二直と完璧に抑えられたが、第2打席ではファールで12球も粘っている。和田は佐藤のしぶとさに苦笑いしきりだった。第3打席の二直を指して、
「紙一重。ちょっと高ければ右中間に抜けていた」
と、ゴリラパワーの爆発を予言していた。
「言動は、いい意味で『阪神らしくない』選手。今の阪神は北條史也を中心としたグループができていて、明るいタイプが多い。佐藤は監督、コーチ、先輩たちに対してはもちろん、メディアにも敬語で話してくれます」(前出・在阪記者)
柳田とも村上とも違う“規格外”パワー
試合中、ベンチでは物静かに対戦投手を見入っている。小腹が減ると、こっそり持ち込んだ乾きものをパクリ。その仕種にプッと吹き出した先輩がいると、「食べます?」と、その袋を差し出すという。
そんな仕種から「天然」と笑われ、「いい意味で鈍感。絶対に大成する」との指摘も聞かれた。
また、守備について心配する声もあったが…。
「佐藤は大学時代、外野を守った経験もあり、主にレフトでした。開幕で予定されるライトの守備でエラーしたこともあります。打球の勢いなどでレフトとライトに違いがあり、それを気にしていますが、今は不慣れなライトに慣れようと必死です。勉強家です」(前出・関係者)
レフト方向に流した打球もスタンドイン。折れたバットで右翼ファールスタンドに軽々と運ぶパワー。近年中に侍ジャパンの4番も任されそうな逸材の成長は、指揮官の矢野燿大監督に託された。
「今年の理想は3番・佐藤、4番・大山悠輔。でも、5番がいいかもしれませんね。現レギュラーとの兼ね合いを考えると、1番・近本光司、2番・糸原健斗となります。佐藤が3番に入ると、左バッターが3人続いてしまうので」(同)
まだ来日できていないが、両打ちの助っ人、メル・ロハス・ジュニアを3番に据え、「5番・佐藤」のプランも聞かれた。他の左バッターとの兼ね合いにもなるが、大山を3番に置き、ルーキーイヤーでの「4番抜擢論」もないわけではない。
「胸元ギリギリの内角攻めを食らわせてのけ反らせれば、外角の変化球で料理できると、各球団は高を括っていました。並みのバッターなら、内角を意識させられたら、ド真ん中の絶好球がきても体が開いて打ち損じてしまうもの。でも、佐藤は内角を意識させられても、体が開かないんです」(前出・球団スタッフ)
ストライク投球が来ると、「打たないともったいない」と思うそうだ。だから、2ストライク後もフルスイングしてくる。
ソフトバンク柳田悠岐、ヤクルト村上宗隆ともちょっと違う〝ゴリラパワー〟が球界を席巻する日は近い。
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