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国内ロボット市場がコロナ禍“非接触ニーズ”で光明!~企業経済深層レポート

企業経済深層レポート (C)週刊実話Web

コロナ禍により大きく変革した市場はたくさんあるが、中でもロボットには各方面から熱い視線が注がれている。まずはロボットの導入について、外食産業関係者に聞いた。

「今はコロナで踏んだり蹴ったりの状態ですが、食事中心の店やアフター・コロナを見据えた店などでは、ロボットを取り入れる動きが加速している。その理由は感染防止や非接触のニーズが多いこと。加えて経営面でのメリットです」

非接触化の取り組みとして急増しているのが、配膳ロボットを導入する例だ。

「料理を厨房からテーブルに届ける配膳ロボットは、天井に貼った位置マーカーをロボットが赤外線センサーで確認して、自動走行する。客がタブレットで注文すれば完全にスタッフと非接触なので、感染対策は万全です」(同)

大手外食チェーンのワタミグループ(東京都大田区)は、同社の主たる『和民』ブランドの店舗を従来の居酒屋から焼肉店に転換するとともに、配膳ロボットと特急レーンの導入によって、接触率80%削減のコロナ対策を実施している。

同様に『焼肉きんぐ』や『丸源ラーメン』などのブランドを全国展開する物語コーポレーション(愛知県豊橋市)も、今年1月から配膳ロボを導入し、一斉稼働させつつある。

前出の外食産業関係者は、ロボット導入による経営面のメリットを明かす。

「コロナ禍で経営状態が逼迫する中、どの業者も今後に備えて可能な限り固定費を削減したい。そこで目玉となるのがロボットの導入です。人件費は1人15~20万円、もしくはそれ以上かかる。しかし、配膳ロボットなどをリースで導入し、固定費を10万円前後に抑えられれば、24時間稼働可能なロボットのほうが経営に優しいのです」

ロボットの活躍範囲は介護や老人福祉の分野でも

コロナ禍で対面授業などに制約が生まれている教育分野でも、ロボットの活躍が目立つ。例えば、アイロボット(米国)の『ルンバ』といえば今やロボット掃除機の代名詞的存在だが、そんな同社が『プログラミングロボット Root』を発売して話題を呼んでいる。教育関係者が解説する。

「小学校低学年の子供たちでも、指示通り使えばプログラミングの入り口に到達できる仕組みです。最近はIT音痴の高齢者にも、頭の体操を兼ねて利用されています」

介護や老人福祉の分野でも、コロナ禍で入居者と家族などの接触が制限される中、ロボットの活躍範囲が広がりつつある。介護施設の関係者が実情を語る。

「長期にわたる面会制限で、入所者が精神的に孤立感を深めやすい。その緩和にコミュニケーションロボットを導入する施設が増えています」

例えば、ユカイ工学(東京都新宿区)のコミュニケーションロボット『BOCCO emo(ボッコ エモ)』を活用すれば、入居者は人と会話しているような雰囲気を味わえる。

「emoはぬいぐるみ程度の大きさで、雪だるまのようなかわいい形をしています。また、毎日定時に『お薬飲んだ?』などのメッセージを伝えてくれるので、高齢者の見守りに役立つと好評です」(同)

また、最近の介護施設や高齢者施設では、中高年の女性スタッフが増加しているが、力仕事などで体を酷使し、離職に追い込まれるケースが後を絶たない。

「慢性的に人手不足の業界では、中高年スタッフの存在なくして施設の維持はできません。介護支援用ロボットスーツを導入すれば、介護者は重量の約4割を軽減できます」(同)

2035年には10兆円規模

サイバーダイン(茨城県つくば市)が開発した『ロボットスーツHAL(ハル)』は、人が身に付けることで、体が不自由な方の治療をしたり、重い物を持ち上げる際にアシストしたりする装着型ロボット。コロナ禍において、企業はより少ない労働者でより多くの作業を行おうとしているため、近い将来は物流や配送など、他の分野での成長も期待されている。

コロナ最前線で闘う病院でも、入り口での検温、マスクチェックなどにロボットの導入が進んでいる。医療関係者が明かす。

「がんやポリープなどを切除する腹腔鏡手術の際には、手術支援ロボットの『ダヴィンチ』が使用されている。従来の開腹手術より人へのダメージが少なく、高度治療も可能なことから、全国の主要病院で導入が進んでいます」

コロナ禍での医師負担を軽減する意味でも、今後はロボット手術がますます増えるだろう。

経済産業省によれば、国内ロボット市場は2025年に5.3兆円、2035年には9.7兆円に達するとされ、製造分野以外ではサービス分野の伸びが特に著しいと予測されている。ロボット工学の専門家が言う。

「ロボット導入は農業分野でも活発で、農産物の収穫などに使われている。コロナが収束すれば従来の予測より拡大し、2035年には10兆円を大きく超えているのは間違いない」

米国や中国を筆頭に世界市場も拡大傾向で、開発競争も一段とエスカレートしそうな気配だ。

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