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日本全国☆釣り行脚~『ウグイ』~埼玉県入間市/入間川産

ウグイ釣り
ウグイ釣り (C)週刊実話Web

相変わらず身に染みる寒さの中、少しずつ春の兆しを感じる早春の候。この時期になると、何となく水郷やら里川やらが恋しくなるものです。雄大な大河川や荒々しい山間の渓ではなく、あくまでも素朴な片田舎の風情が残る用水路や里川に萌える…。春まだ浅き里の道を歩いたり、日だまりの中で糸を垂れるというのが、またいいものです。

ただですね…「三寒四温」という言葉どおり、朝晩は真冬並みの冷え込みになることは珍しくなく、水の中はまだ冬の真っただ中。陸上の陽気に誘われて出かけたものの、空振りを食らうこともよくあります。

でも、いいんです。1日のんびりとウキを眺め、夕方に陽の長さを感じながらの帰り道もまた趣がありますから。

ということで、春めいた陽気に誘われ、埼玉県中部を流れて荒川へと注ぐ入間川河畔へとやってまいりました。

映画『となりのトトロ』の舞台となったとされる狭山丘陵を流れる入間川。流域には里川の風情が残り、宅地開発が進んだとはいえ、付近には古きよき武蔵野の面影がまだまだ残っております。

のんびりと陽が高くなった頃に起き出して西武鉄道へと乗り込み、河原に近い元加治駅で下車。すっかり陽射しが暖かくなったお昼すぎに河原に到着しました。釣り人の姿などない寂しい川辺に荷物を下ろし、さっそくノベ竿に簡単なウキ釣り仕掛けを結び付けます。ハリに付けるエサは、道中のコンビニで買った『チーズ蒸しパン』。余ってもおやつになるので非常に優秀です。

チョンッ→空振りという一連の連続…

さっそく仕掛けを流していきますが、なかなか反応はありません。まあ、想定内ではありますが、里川の小物釣りには時期尚早のようです。そこで、この低水温下でも魚が溜まりそうな流れのよどみを探して、すこし河原を歩いてみることにしました。

西武鉄道の鉄橋に近づくと、流れのよどんだ深みを発見。水がやや濁っているせいもあり底は見えません。

「ここならいるかも…」

試しに仕掛けを入れてみると、流れがないためにウキも流されず、のんびりアタリを待つことができます。

のんびりアタリを待っていると…?
のんびりアタリを待っていると…? (C)週刊実話Web

チョン!

ボ~ッとウキを眺めていたところ、ウキの頭が一瞬沈みました。ハッとして慌てて竿を煽りましたがハリにはエサがありません。エサを付け直して再び投入しますが、チョンッ→空振りという一連の連続です。う~む、悔しい!

このまま続けてもらちが明かないので、エサをサシ(ハエの幼虫。いわゆるウジ虫)に替えてみます。これなら間違いないはずです。

チョンチョン! …ススス~ッ!

ウキが完全に沈んだところで手首を返すと「プルプルッ!」。心地よい手応えで釣れたのは小さなカワムツ。いや~、この素朴な趣が楽しいんですな。

特エサ炸裂で雑魚跳ね踊る!

とはいえ、まだ水温が低い時期ゆえ魚の活性は決して高くありません。エサへの反応も鈍いため、時間が経つと溶けてしまうチーズ蒸しパンではハリに掛からないわけです。一方のサシはハリに残って動きもあるため、魚がしつこく食い込んでくれます。アタリがあってもハリに掛かるのはせいぜい3割程度ですが、〝釣れそうで釣れない〟この攻防が楽しいんです。

そんななか、ひときわ勢いよくウキが消し込まれるアタリが出ました。手首を返すようにして竿を煽ると、元気な手応えで15センチほどのウグイが跳ね上がりました。普段はどうでもいい〝雑魚〟ですが、里川の小物釣りでは満足な獲物です。

15センチ台のウグイが!
15センチ台のウグイが! (C)週刊実話Web

「風も冷えてきたことだし、そろそろ帰るか…」

日が傾いてやや寒さを感じ始めた頃に、ウキが勢いよく消し込まれました。水中でキラキラと輝きながら上がってきたのは15センチほどのオイカワ。この1尾に満足し、日暮れ前に河原を後にしました。

カワムツ、ウグイ、オイカワと、飽食の現代では食べることもなくなった川魚ですが、フライにして晩酌の肴としましょう。

ウロコと腹ワタを取り除き、衣を付けて油の中へ。揚げたてにかぶりつくと、川魚特有のホロ苦さがビールにベストマッチ。この素朴な味わいこそ川魚の醍醐味ですな。

フライにして酒の肴に
フライにして酒の肴に (C)週刊実話Web

派手さはまったくない里川の小物釣りですが、早春の好日をのんびり楽しめて、十分に満足でありました。

三橋雅彦(みつはしまさひこ)
子供のころから釣り好きで〝釣り一筋〟の青春時代を過ごす。当然のごとく魚関係の仕事に就き、海釣り専門誌の常連筆者も務めたほどの釣りisマイライフな人。好色。

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