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感染リバウンドを防ぐには~森永卓郎『経済“千夜一夜”物語』

感染リバウンドを防ぐには~森永卓郎『経済“千夜一夜”物語』
感染リバウンドを防ぐには~森永卓郎『経済“千夜一夜”物語』 (C)週刊実話Web

3月21日まで2週間延長していた首都圏1都3県に対する緊急事態宣言の解除が、正式に決定した。そもそも多くの感染症の専門家は、単純な延長は意味がないと批判していた。自粛に頼る抑制策は長続きしないからだ。実際に首都圏の人出はすでに増え始めており、新規陽性者数も底打ちして横ばい状態になっている。

飲食店の夜間利用制限を中心とする抑制策が一定の成果を収めたのは事実だが、それだけでは感染収束に持ち込めないことが分かったのが、今回の緊急事態宣言の結論だったのだ。

宣言延長の際に会見した分科会の尾身茂会長は、延長の理由として首都圏の特殊性を挙げた。人口が多く、歓楽街が多く、匿名性が高いため広域の連携が難しい。その結果、首都圏は感染源が分からないことが多くなっているというのだ。

2月末に緊急事態宣言が解除されたときの大阪や愛知の感染状況と比べて、千葉、埼玉、神奈川は似たような状況にある。それにもかかわらず宣言が延長された理由は、ただ1つ、3県が東京に隣接しているからだ。だから、感染リバウンドを防ぐためには「東京対策」が必要となる。東京都の小池百合子知事は、ステイホームの徹底を呼びかけているが、残念ながらその言葉に従わない都民が多く出ているのは間違いない。

それでは、どうしたらよいのか。私は方法が2つあると考えている。1つは東京23区での徹底的なPCR検査の実施だ。これまでの1年間、日本では「感染症村」の人たちの妨害で、PCR検査の拡大ができなかったが、政府は少しずつ方針を転換し始めている。

優先接種の対象を東京23区の住民に切り替えるべき

クラスターが頻発する高齢者施設では、3月中に従事者全員の検査を完了する予定だ。そして、今後は大都市でも無症状者に対する無料のモニタリング調査を実施することになった。しかし、その検査規模は最大で1日1万件とされている。そんな規模では、とても無症状の感染者をあぶり出せない。1日100万件程度の検査を東京23区の住民全員に行って陽性者を隔離すれば、東京のリスクを大幅に下げることができるのだ。

もう1つはワクチンだ。アメリカのバイデン大統領は、成人全員に対するワクチン接種を5月中に完了できるとの見通しを示した。それに対して、日本は年内の接種完了が危ぶまれる状況だ。日本には優秀な製薬会社がたくさんある。ワクチン輸入ができないのなら、日本でライセンス生産ができるように交渉を急ぐべきだ。大阪大学が開発しているワクチンを緊急承認する手もある。

さらに、究極の手段がある。それは、高齢者に接種する予定のワクチンを東京に回すことだ。そもそも高齢者への優先接種は、医療崩壊を恐れる医療界の要望で決まったものだ。高齢者は感染すると長期間ベッドを占有するので、高齢者の感染を減らそうとしたのだ。ただ、病床使用率に余裕が生まれた今こそ、優先接種の対象を感染リスクの高い東京23区の住民に切り替えるべきだ。

感染の第2波も第3波も、東京で増えた感染者が隣接3県に染み出し、大阪、名古屋という大都市に飛び火し、それが全国に広がっていった。その轍を踏まないように、今こそ東京の感染を徹底的に抑えるべきだ。自粛政策からの転換を図らないと、日本経済は沈んでいく一方になるだろう。

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