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やくみつる☆シネマ小言主義~『テスラ エジソンが恐れた天才』/3月26日(金)より全国公開

ⒸNikola Productions, Inc. 2020

『テスラ エジソンが恐れた天才』
監督・脚本・製作/マイケル・アルメレイダ
出演/イーサン・ホーク、カイル・マクラクラン
配給/ショウゲート

知る人ぞ知る天才発明家ニコラ・テスラ。1880年代に、あの発明王・エジソンが手がける直流とテスラが進める交流のどちらが優れているかの「電流戦争」で圧勝してしまうほどの天才っぷり。今や送電の世界標準となった「安全で安価」な電力がテスラのおかげだったとは!

功績は電力システムだけじゃありません。ラジオ、ラジコン、無線、電気モーター、点火プラグまで発明し、生涯に約300件もの特許を取得。「彼がいなければ世界は100年遅れていた」にもかかわらず、世渡り下手で実業界や社交界には馴染めず、晩年は金銭苦に陥って、86歳で亡くなった時には、ほぼ無一文だったらしい。

そんなテスラの半生を描いた本作ですが、映画の趣旨は別にして、理科の勉強をサボリまくったツケが回り、理解しようとしてもイチイチつまずきます。もちろん、交流と直流は習った覚えはあるものの、その違いは甚だおぼつきません。

あのイーロン・マスク氏が崇拝する発明家の物語

映画の中でも、エジソンが交流電流の危険さを示すために、当時検討されていた死刑用の電気椅子に交流電流を採用させて人々に怖さを植え付けようとするエピソードが描かれますが、自分の知識不足のせいで、今いちピンとこない。見終わった後で、ネット検索してやっと理解する始末です。どうにも手遅れ感が否めません。この映画を見るなら、理系女とのデート、または現役高校生を誘うのが得策かと。おそらく、嬉々として解説してくれることでしょう。

一方、面白いと感じたのは、彼の才能に惚れ込んだ資産家の娘アン・モルガンが狂言回しとして回想する手法。晩年の悲運もアンの言葉でサラリと語られ、正負の揺れの激しい人生を俯瞰的に眺められるというわけです。

ところで、「テスラ」というワードで、今、連想するのは、やはり米国の電気自動車メーカーでしょう。アマゾンの創始者ジェフ・ベゾス氏を抜いて、一時は世界一の富豪となったこともあるイーロン・マスク氏が、崇拝する「ニコラ・テスラ」にちなんで社名にしたとか。

ガソリン車から電気自動車へのシフトの引き金を引き、世界を一変させたマスク氏も相当な奇人らしいですから、通底するものを感じるのでしょうね。

車といえば、コロナ禍のこの3月、17年乗ったマニュアルの外車を国産軽自動車に買い換えました。免許の返納を考えていたんですが、「もうしばらく運転を続けて」と逆に頼まれまして。

自分にとっては初オートマ。次の車はないと思うので、電気自動車には乗れずに人生を終えそうです。

やくみつる
漫画家。新聞・雑誌に数多くの連載を持つ他、TV等のコメンテーターとしてもマルチに活躍。

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