サッカー戦術分析ユーチューバーが解説する超~本格的な戦術書『蹴球学』

『蹴球学』KADOkAWA/1800円

Leo the football(レオザフットボール) 日本一のチャンネル登録者数を誇るサッカー戦術分析ユーチューバー。日本代表やプレミアリーグを中心とした欧州サッカーリーグのリアルタイムかつ上質な試合分析が、目の肥えたサッカーファンたちから人気を博す。サッカー未経験ながら独自の合理的な戦術学を築き上げ、自身で立ち上げた東京都社会人サッカーチーム『シュワーボ東京』の代表兼監督を務める。

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――サッカーの戦術分析を始めたきっかけは、なんだったのですか?

レオザ 友人でサッカーゲーム・ユーチューバーのちゃまくんから勧められたことがキッカケでYouTubeに投稿を始めました。戦術分析のコンテンツが多くなったのは、試合を観ているときに僕自身が気になる部分をトークテーマとして語ることが多かったからです。

――日本では、戦術の基本が押さえられていないと語られています。どのような部分でしょうか?

レオザ 守備面ではハイプレスでのボールの奪い方です。相手が3バックに可変されると、迷って後手に回ってしまう現状が改善されず、それが何年も続いています。攻撃面ではビルドアップの方法ですね。パスが繋がっても相手の守備ラインを越えられなかったり、越えにくい形で攻撃を構築している。また選手の技術的、フィジカル的な優位性に頼る試合が大半になっている。試合ごとのコンディションや相手との自力の差に頼るガチャ的な戦術なので、質の高い選手が欠場していたり、ボールを持たされる展開の試合では、圧倒的な戦力差がないと、攻撃の仕方でチームの意思疎通が取れず崩壊してしまうのです。W杯でのコスタリカ戦、クロアチア戦、アジア杯でのイラン戦がそのいい例と言えるでしょう。

指導者にも競争システムを?

――日本のサッカーの「戦術レベル」を上げるには、何が必要だと考えていますか?

レオザ 指導者ライセンスの見直しと、可能な限りの自由競争化です。現在はライセンスの間口が狭く、時間とお金がかかり過ぎている。また、ライセンス取得者が試合で起こしている現象に疑問を感じています。実力不足で解任されてもすぐに別のチームの監督を任されるような〝村社会〟と揶揄されがちなので、ライセンスの間口を広げ、雇用者側に選択肢を増やすことが必要です。指導者に対しても、選手たちと同じように健全な競争システムを構築するべきでしょう。

――五輪、W杯で日本が躍進するためのポイントを教えて下さい。

レオザ 監督の采配やプランが杜撰で曖昧なので、選手の能力がフルで発揮できるようなコンディション作りが重要です。こう言うと悲観的に聞こえるかと思いますが、選手の質が低くて指導者の質に頼らざるを得ない国よりは良いとも考えられます。プランは杜撰でも選手の発想を邪魔しない監督は出てきやすい国ですので、圧倒的な選手が揃う世代と、組み分けなどの運に恵まれる大会を楽しみに待ちましょう。

(聞き手/程原ケン)