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リーマン並みでも危機感ゼロ~森永卓郎『経済“千夜一夜”物語』

森永卓郎
森永卓郎 (C)週刊実話Web

今年1~3月期のGDP(国内総生産)が実質の年率で2.0%のマイナス成長となった。GDPの半分以上を占める個人消費が▲0.7%、設備投資も▲0.8%と不振だった。

特に個人消費は4四半期連続のマイナスとなっており、4四半期連続の減少はリーマン・ショックに見舞われた2009年1~3月期以来で、実に15年ぶりの経済危機となる。


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2008年9月に起きたリーマン・ショックは、国民生活に深刻な影響を与え、09年8月には、最低賃金の引き上げや税金のムダ遣いと天下りの根絶を掲げた民主党への政権交代に結びついた。

当時、国民の最大の関心事は、景気を復活させるための経済対策だった。

ところが、今回は野党からそうした議論がほとんど出てこない。5%を超える高い回答を得た春闘の成果が、今後賃金に反映され、景気が戻っていくとする政府や評論家の予想を信じているからだろう。

ただし、この「賃上げと経済成長」の好循環が絵に描いた餅、もっと言えば、悪質な情報操作であることは、間もなく明らかになるだろう。

春闘で賃金が上がったのなら、4月以降の実質賃金がプラスに転ずるはずだからだ。

やる気を完全に失った自民党

しかし、そうはならない。すでに実質賃金は、今年3月まで24カ月連続で前年比マイナスが続いている。特に今年3月は、前年比2.5%減とマイナス幅を拡大している。

最大の原因は、一時落ち着きをみせていた消費者物価が、再び騰勢を強めていることだ。

すでに3月の消費者物価上昇率は2.7%まで高まっており、円安の影響もあって、物価高騰が落ち着く見通しはまったくないのだ。

一方の賃金だが、そもそも経団連が発表した5.58%の春闘賃上げ率は、大企業の正社員だけの話であり、中小企業や非正社員の賃金はさほど上がっていない。

また、大企業正社員の春闘賃上げ率に関しても、一部の企業が賞与の増額分を含めているなど、偽装の疑いが消えないのだ。

いずれにしても、6月7日には4月分の毎月勤労統計が発表されるから、岸田政権が立脚する「賃金と経済成長の好循環」という経済政策が、完全に失敗だったことが明確になるだろう。

野党にとっては、6月にも見込まれる解散総選挙は、この状況が大きなチャンスとなる。自民党は政治資金改革とともに、景気対策も、やる気を完全に失っているからだ。

景気対策の基本は、一にも二にも、国民の実質手取り収入を増やすことだ。そのための最も効果的な方法は、減税、特に消費税減税だ。

岸田政権の強烈な財政緊縮策によって、いま日本の財政にはとてつもない余力が生まれている。

今年度予算の基礎的財政収支赤字は9兆円だが、これは税収増をほとんど見込まないという偽装の結果であり、普通に税収の伸びを計算したら、すでに財政は黒字になっている。

また最近、国際的な財政比較で最重視されるようになった公的債務の利払い費がGDPに占める割合でみると、日本はG7のなかで、カナダに次いで財政が健全になっている。

どうしても減税財源が欲しいのであれば、外貨準備を使って、少し強めの為替介入をすればよい。

消費税を1年間ゼロにするくらいの差益はすぐに出てくるし、円高も是正されて一石二鳥になる。

目前に迫る総選挙に向けて、いまこそ、野党が打ち出す経済政策が、注目されている。

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