スポーツ

「ポスト原」にイチロー再浮上!…巨人・ヤクルト電撃トレード裏事情

Alan C. Heison / Shutterstock.com

「アフター原監督」を念頭に、巨人が坂本勇人の後継者としてヤクルトの若手内野手・廣岡大志を獲得した。狙いは、智弁学園の1年先輩・岡本和真との「三遊間」を新たな看板にすることで、仕掛け人はイチロー氏とウワサされている。〝ポスト原監督問題〟に新展開か――。

今季で3年契約が満了する巨人・原辰徳全権監督が〝聖域なきトレード〟を敢行。その意図を巡ってチーム内外に動揺が走っている。先発で2年連続二桁勝利を挙げた実績がある田口麗斗投手をヤクルトに放出し、通算打率2割1分4厘の廣岡大志内野手と〝格差トレード〟を実行したからだ。

「巨人のショートは2008年以来、坂本が実質1人で守ってきた。しかし、守備負担の蓄積から、下半身に疲労が滞留。コンバートも検討される中、損得抜きで廣岡の将来性に賭けたようだ。巨人がDH制導入を急ぐ理由も、実はここにある。話は巨人からヤクルトへ持ち込まれたようで、その仕掛け人こそイチロー氏とウワサされている」(ある球団OB)

イチロー氏は、読売新聞グループ本社代表取締役主筆の渡邉恒雄氏が、10年越しで次期監督にとラブコールを送る人物だ。そのため、今回のトレードには「監督委譲の一環」という声も囁かれているのだ。

「というのも、廣岡は巨人の若大将・岡本和真の、智弁学園(奈良)時代の1年後輩。高校時代は三遊間を組み、春夏の甲子園で活躍した。その智弁学園グループとこの2年余り、急速に関係を深めているのがイチロー氏」(同)

これが、「仕掛け人説」の根拠となっている。

イチロー氏と智弁学園グループとの交流のきっかけは、18年11月に智弁和歌山の試合を観戦したことにさかのぼる。試合は0対12で智弁和歌山が大敗したが、最後まで懸命に応援する同校の姿勢に感銘を受け、目を赤く染めたという。

坂本勇人の後継者の目処を付けておきたい原監督

その話が知人を通じて学校側に伝わり、イチロー氏は同校の藤田清司理事長へのあいさつを兼ねて訪問。12月にはブラスバンドがイチロー氏の自主トレに駆けつけ、逆転劇を演出する同校の「ジョックロック」などを演奏し、絆が深まった。

イチロー氏は19年、メジャーリーグの開幕シリーズとなる東京ドームで行われたアスレチックス戦2試合に出場後、現役引退を発表し、マリナーズ会長特別補佐に就いたが、その一方で、自身の草野球チーム「KOBE CHIBEN」を結成。同年12月にほっともっと神戸で初戦を行った際には、智弁学園グループが教職員を中心とするチームを派遣して対戦した。昨年12月には智弁和歌山のグラウンドで同校の野球部員を指導もしている。

説明が少々長くなったが、このようにイチロー氏は「岡本-廣岡」を輩出した智弁学園グループと強い信頼関係を構築しているわけだ。スポーツ紙デスクがこう話す。

「智弁和歌山と智弁学園は兄弟校で、理事長も同じ。イチロー氏は両校関係者から岡本の高校時代の逸話を聞くとともに、廣岡のポテンシャルも負けず劣らずだったという話も聞いている。2人が三遊間を組めば廣岡が覚醒し、相乗効果で好成績が期待できると。頼まれたわけではないだろうが、イチロー氏がその声を原監督に届け、自身が監督のうちに坂本の後継者の目処を付けておきたいと考えた原氏が応じた。これが今回の電撃トレードの舞台裏」

09年の第2回WBCで世界一になった際、代表指揮官が原氏で、決勝戦の韓国戦で決勝タイムリーを放ったのがイチロー氏だ。2人はお互いリスペクトしており、特別の師弟関係というのだ。

桑田真澄氏へ禅譲する考えはない…

現在、智弁和歌山の監督を務めるのは、1995年にドラフト1位で阪神に指名され、捕手として活躍した中谷仁氏。チーム事情で06年に楽天にトレードされたが、その後、巨人で現役を終えた。その縁で、第3回WBCでは、原監督の推薦でブルペン捕手として日本代表に招かれ、チームを支えた。

その後、母校の智弁和歌山で野球部部長を務め、名将・高嶋仁監督の勇退に伴い、18年秋に監督職を継承している。

「その意味では、中谷監督は原監督とも懇意。しかし、プロアマの垣根があるため、OBといえども進路の話はできない。そこで、米球界に身を置くイチロー氏が間に入ったのだろう。一方、原巨人後を見据え、イチロー氏が新チームの絵を描いたという情報もある」(同)

今キャンプから、巨人には桑田真澄氏が投手チーフコーチ補佐として加わった。そのことで、桑田コーチ補佐を「次期監督候補の筆頭」と見る向きもあるが、編成面の権限も持つ原監督の考えは違う。桑田氏の起用はあくまでメジャーに再挑戦する菅野智之投手のケアが目的。今季で勇退する場合でも桑田氏へ禅譲する考えはないという。

読売グループの放送関係者が、次期監督問題をこう占う。

「原監督は、渡邉主筆が次の監督にイチロー氏を望んでいることを知っています。スポーツ科学を学んだ桑田コーチ補佐ですが、主筆が欲しているのは、スポーツばかりでなく、哲学、美学、心理学、経営学、政治学すべてを理論立てて説明できる人物です。あとは原監督とイチロー氏の決断次第」

阿吽の呼吸で実現させた今回のトレード。コロナ禍を吹き飛ばすために、〝イチロー巨人〟ならインパクトは十分だ。

【画像】

Alan C. Heison / Shutterstock.com

あわせて読みたい