(c)2024年「お終活 再春!」製作委員会
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やくみつる☆シネマ小言主義~『お終活 再春!人生ラプソディ』/5月31日(金)全国ロードショー

脚本・監督:香月秀之 出演:高畑淳子、剛力彩芽、松下由樹、水野勝、西村まさ彦、石橋蓮司、藤吉久美子、増子倭文江、LiLiCo、窪塚俊介、勝俣州和、橋本マナミ、藤原紀香(友情出演)、大村崑、凰稀かなめ、長塚京三、橋爪功 配給:イオンエンターテイメント


このところの映画界では「お年寄り奮闘記」というのが一大ジャンルとして定着した感があります。


このコーナーでも、杏のオケピもの、石橋蓮司のハードボイルド、藤竜也のゲートボールなど数々ご紹介いたしました。


自分も前期高齢者の年齢に達し、客席が高齢者一色のコンサートなどにも好んで行くのですが、感じるのは「高齢者は娯楽に飢えている」ということです。


【関連】やくみつる☆シネマ小言主義~『PS1 黄金の河』/5月17日(金)全国ロードショー ほか


今の世の中、音楽、映画、ドラマにしても、どうしても若い人向けが中心。流行のタイムリープものは時系列が複雑に入り組んでいて分かりにくいし、賞をとる映画はテーマが哲学的で意味が分からなかったり…。


高齢者ってシンプルに喜んだり楽しんだりしたいんですよ。自分がその年になってみて、その社会的ニーズがはっきりと理解できます。

生いとは、老い。だったら笑い飛ばそう

本作は、71歳の主婦が青春時代の夢に挑戦する「再春」ストーリー。


我々観客は、配偶者の認知症疑惑を「あるある」と笑ったり、やり残したことをやろうと奮闘する高畑淳子の姿に勇気づけられたり。終活は生前整理だけじゃないことに気づくんですよ。


そういう年配の人の欲求に応えるコンテンツはまだまだ少なくて、みんな飢えている、こういうジャンルは必要とされている、という思いを強くしました。


なんたって作りが親切なんです。本作では、高畑淳子が饒舌なキャラですから、登場人物の関係性などを全部セリフで説明してくれて迷いようがない。


蛇足だと思われようと誰一人とり残さない配慮は、「高齢者による、高齢者のための」娯楽には必要なんですと申し上げたい。


剛力彩芽など若い登場人物は高齢者に反発するでもなく、受け入れて寄り添う。まさに年寄りの理想郷ですね。


認知症の進行や親子の葛藤、介護問題などの現実は、いやでも味わっているわけですから、映画の中ではあくまでもポジティブに。お墓事情などのお役立ち情報もあり、ご覧いただきたい。


さらに、役者たちが年を重ねて往時とは別の味わいを出している点も見逃せません。例えば長塚京三。90年代のCMでイケオジとして一世を風靡した彼がどことなく萎んだ姿を取り繕うことなく晒しています。


老いのどうしようもなさを体現しながら、まだできることがあるはずだという気持ちにさせてくれます。