(c)Madras Talkies (c)Lyca Productions 
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やくみつる☆シネマ小言主義~『PS1 黄金の河』/5月17日(金)全国ロードショー

監督/マニラトナム 出演/ヴィクラム、アイシュワリヤー・ラーイ、ジェヤム・ラヴィ、カールティ、トリシャー・クリシュナン 配給/SPACEBOX ※『PS2 大いなる船出』は6月14日(金)より新宿ピカデリーほか全国順次公開


このコーナーでは久々のボリウッド映画。いやぁ、予想以上の大作で、お腹いっぱいになりました。


NHKの大河ドラマ半年分のエピソードをギュゥッとねじ込んだかのような2時間40分。戦闘シーンも、豪奢な王宮も、キンキラキンの宝飾つき衣装も、もちろんボリウッドならではのミュージカルダンスシーンもたっぷりで、息をつかせません。


もちろん、CGは使いたい放題に使っているのでしょうが、壮大なセットといい、キャストの多彩さ、膨大な人数のエキストラといい、一体どれだけの予算と時間が投入されているのだろうと思ってしまいます。


原作は1950年に発売されたベストセラー歴史小説『ポンニ河の息子』。全5巻2200ページもの大作らしいです。


10世紀に実在したチョーラ王朝の存亡をかけた愛憎と陰謀が渦巻くドラマは、そのあまりの壮大なストーリーと情報量から、何度も映画化が試みられながら資金面と技術力不足で頓挫。70年をかけてやっと映画化できたそうです。


IT大国インドの目覚ましい経済発展と無関係ではないでしょうね。

待ってました! インド“特濃”映像絵巻

しかしながら、どこか緊張を強いられている自分に気づきます。

ストーリー自体はそれほど複雑ではないのですが、何しろ主要人物だけで15人。濃い風貌のインド風イケメン&美女がこれでもかと出てくるので、ちょっと油断すると誰が誰だか分からなくなってしまう。


この人が主人公の騎士で、この人はそのご主人様である長男の第一王子。この絶世の美女は第一王子と恋仲だったが、今は陰謀たくらむ重臣の妻となり王子と王国を恨んでいて…といちいち見定めなければすぐに混乱してしまうんですよ。


お腹いっぱいに感じたのはこの緊張感のせいかもしれません。


とはいえ、次々と繰り出される絢爛豪華なダンスや音楽などは、さすがの完成度。海外でよくある伝統ショーを見ているようで楽しかったですね。


そして、あろうことか、これは2部作の前編でしかありません。


胃もたれしそうなほどの特濃っぷりが最後まで続いた揚げ句、主人公たちの乗った船が海に沈み突然終わります。続きの展開は、全く予想できません。


5月公開の本作に続き、後編は約1カ月後に公開決定しているようです。


確かに前後編は、日を分けて挑まないと消化しきれない恐れがあります。


しかも間を空けてしまうと、「この人誰だっけ?」となること必至。自分もしっかり頭の整理をしてから、後編に臨みたいと思います。
やくみつる 漫画家。新聞・雑誌に数多くの連載を持つ他、TV等のコメンテーターとしてもマルチに活躍。