増田俊也 (C)週刊実話Web 
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『七帝柔道記Ⅱ 立てる我が部ぞ力あり』著者:増田俊也~話題の1冊☆著者インタビュー

増田俊也(ますだ・としなり) 1965年愛知県生まれ。2006年『シャトゥーン ヒグマの森』で「このミステリーがすごい!」大賞優秀賞を受賞しデビュー。12年『木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか』で、大宅壮一ノンフィクション賞と新潮ドキュメント賞をダブル受賞。
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――前作は連載漫画化され、ラジオでもドラマ化もされた人気作です。11年ぶりの待望の続編ですが、ずいぶんと間が空いてしまいました。


増田 前作は北海道大学柔道部の1年生と2年生のときのことを書きました。かなり売れたので、「続編はないのか」「早く3年生時代と4年生時代が読みたい」という読者の手紙やメールが殺到しました。しかし、前作から気持ちを整理するのに時間がかかりました。ウイスキーで言えば樽詰めです。オーク樽の色が染み出してアルコールが琥珀色になる時間がこの「Ⅱ」には必要でした。でも、今回は勢いに乗って書いたので、「Ⅲ」も1年以内に出せると思います。

寝技だけの特異な柔道の覇権を目指す!

――「寝技だけ」というルールでは、経験の浅い選手が強くなるといいます。なぜでしょうか?

増田 この『七帝柔道』というのは、いま人気のブラジリアン柔術の源流になった特殊な柔道です。ワニのように寝技に引きずり込んで相手を絞めたり関節を取ったりする。寝技というのは体格やパワーよりも、研究や練習が大切なんです。だから僕たちみたいに素質に恵まれない旧七帝大(北大・東北大・東大・名大・京大・阪大・九大)の選手には、合ってるんです。徹底的に技術を研究して、それを繰り返し練習して体に覚え込ませるのです。


――前作で4年連続最下位となった北大が、復活に向かって動き出します。最後の試合シーンも圧巻で、ページをめくる手が止まりませんでした。


増田 連載しているときにいろいろ悩んで、『SLAM DUNK』(井上雄彦)や『タッチ』(あだち充)を久しぶりに読み返したんです。どちらも試合で読者を圧倒してくる。それで僕も吹っ切れて、今回の作品では試合をメインに持ってきました。その結果、読者から「超面白い!」という声がたくさん集まっています。やはりスポーツ作品は試合こそが華なんだと思います。「小説でこんなに興奮したことはない!」という声もたくさん貰いました。このあと書く『Ⅲ』では、僕の代が引退して後輩たちに優勝の夢を託していきます。北大優勝の悲願を遂げるのは僕たちが4年生のときの1年生、つまり中井祐樹が4年生になったときでした。そうです、後にヒクソン・グレイシーと戦うあの中井祐樹です。だからこの作品は北大柔道部だけの物語ではなく、日本と世界の格闘技史をものみ込む巨大な物語なんです。もちろん中井祐樹vsヒクソン・グレイシーの場面も描かれます。楽しみにしていてください。


(聞き手/程原ケン)