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俳優・勝新太郎さん「もうパンツをはかないようにする」~物議を醸した『あの一言』大放言うらおもて~
江戸長唄三味線の師匠、杵屋勝東治の次男として生まれた勝新太郎は、10代で稽古代、20歳のときに二代目杵屋勝丸を襲名して、深川芸者に長唄や三味線の稽古をつけていたという。
ところが、1954(昭和29)年のアメリカ巡業中、撮影所で紹介されたジェームズ・ディーンに感化され、映画俳優を志す。同年に大映と契約すると、さっそく映画『花の白虎隊』で脇役ながらデビューを果たした。
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その頃、大映のスターは『銭形平次捕物控』シリーズの長谷川一夫で、勝は当初から「長谷川の後継者」として多くの作品に抜擢された。
しかし、同年デビューで現代風の男前だった市川雷蔵の人気が先行し、勝が白塗り二枚目で臨んだ時代劇は評判倒れが続いた。
その後、勝は博徒役で主演した61年の『悪名』で、ようやくヒットに恵まれる。
以後も『座頭市』や『兵隊やくざ』など、どこかコミカルさを漂わせたダークヒーロー役が当たり、不動の人気を獲得。勝は『眠狂四郎』シリーズの雷蔵と並ぶ大映の二枚看板となった。
だが、映画界全体を見ると、テレビの普及に押されて観客動員数は減少の一途をたどる。そんな中、勝は67年に独立して勝プロダクションを設立し、独自の映画製作だけでなくテレビドラマにも進出して、『座頭市』シリーズ(フジテレビ系)をヒットさせた。
しかし、経営状態は順風満帆どころか、もともとの豪放磊落な気質が災いして徐々に雲行きが怪しくなっていく。
78年にはアヘンとその吸引器具を処分するよう、事務所の所属俳優に依頼した疑いで書類送検される。このときに勝は「イランの貴族から贈られ、社長室に置いていたが、芸能人の大麻事件が相次いだので処分を依頼した」と話している。
79年には黒澤明の新作映画『影武者』のロケ中、主演でありながら突然の降板。80年には勝が監督、脚本、主演を務めた勝プロ製作のドラマ『警視-K』(日本テレビ系)の放送が始まったが、リアリティーを追求する勝の「台本なしのアドリブ」「聞き取れない小声の演技」などが受け入れられず、視聴率は低迷。おまけに予算の大幅オーバーで打ち切りとなった。
その結果、勝プロは81年に倒産するが、時代はバブル期に突入。お金を余らせた企業の支援を受けて、映画版『座頭市』を新たに製作するが、ここでもトラブルに見舞われる。
俳優デビューとなった勝の息子・奥村雄大(鴈龍)が真剣を使った殺陣のリハーサル中、斬られ役の俳優を誤って死亡させる事故を起こしてしまったのだ。
当然、芸能マスコミからは大バッシングを受けたが、これが逆に映画の宣伝となり、興行成績は上々の結果だったという。
これでようやく復活を果たすかと思ったが、勝は90年1月に米国ハワイ州のホノルル国際空港で、下着にコカインとマリファナを入れていたとして現行犯逮捕されてしまう。
しかも、ちょうど日本では勝が出演するキリンラガービールのCMが始まっており、5億円もの費用をかけた大作がたった1日で打ち切り。CMの制作会社から損害賠償請求の民事訴訟を起こされた。
「執行猶予はアカデミー賞」
罰金刑で即日釈放された勝は、その後も「麻薬は飛行機の中でファンにもらった」という主張を崩さず、ついには「なぜ、パンツの中に入っていたか分からない。今後は同様の事件を起こさないよう、もうパンツをはかないようにする」と発言。百戦錬磨の演技力で周囲を振り回し、およそ1年半後、強制退去命令を下されて帰国する。帰りの飛行機で泥酔した勝は、同乗していた記者たちに「大統領や総理大臣には代わりがいるだろうが、俺の代わりはいない」とうそぶいた。
珍発言を連発したことで、いったんは世間から許されたような雰囲気になった勝だが、それもつかの間、帰国時の尿検査で直前にコカインを吸っていたことが発覚する。
その後、改めて麻薬及び向精神薬取締法で起訴され、懲役2年6カ月、執行猶予4年の判決が下された。
しかし、勝は「執行猶予は俺にとってアカデミー賞をもらったような気分だ」と、反省どころかますますの意欲を見せたのだった。
96年に下咽頭がんを発症した勝は、治療の経緯を報告した記者会見で「医者からストップがかかって、タバコはやめた」と言いながら、その場で堂々と紫煙をくゆらせた。
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