巨星堕つ。ハワイ出身で史上初の外国出身横綱となり、引退後はK-1や総合格闘技、プロレスなどで活躍した第64代横綱曙太郎(旧名チャド・ジョージ・ハヘオ・ローウェン)さんが、心不全のため都内の病院で亡くなったと、4月11日に日本相撲協会が発表した。54歳だった。
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初土俵は1988年3月場所。曙さんは身長2m3cm、体重200キロを超す体格で、その長い腕を生かした突き・押しで番付を駆け上がり、わずか5年弱で横綱に昇進した。
空前の若貴兄弟(後の横綱若乃花、横綱貴乃花)ブームの中、史上10位の11回優勝を果たし、大相撲人気をけん引した。
役どころは、同期入門の若貴の敵役、悪役だったが、優しさや人のよさでも横綱級だった。こんなエピソードがある。
若貴ブームの真っ最中のこと。貴乃花を破って分厚い懸賞の束を獲得した曙さんは、「さあ、お祝いだ」と付け人らを連れて行きつけの店に繰り出した――。
「これで温かい物を食べてください」
折しも冷たい雨が降っており、店の前にはホームレスの老人が寒そうに身をかがめて立っていたという。
曙さんは店に入り、目の前に並んだ料理に手をつけようとしたが、さっき見たホームレスがどうにも気になって仕方がない。
曙さんは意を決して立ち上がり、今日の一番で獲得したばかりの懸賞の束を取ると、濡れてたたずむホームレスのところに駆け寄り、「これで温かい物を食べてください」と言って、その束を握らせたのだ。
ちなみに、この日獲得した懸賞は17本。1つの袋に3万円ずつ入っているので、全部で51万円だった。どうしてこんなことをしたのか。曙さんはこう言っている。
「うちの兄弟やお母さんがホームレスだったら、裕福な人に助けてもらいたいでしょう」
そのあと、店に戻った曙さんは、すっきりした気分でおいしく料理をたいらげたそうだ。
「勝負師にしては優しすぎるハートの持ち主だったため、曙さんはしばしば当時、一大勢力を誇った若貴や貴ノ浪、安芸乃島、貴闘力らの所属する二子山部屋勢に痛い目に合わされた。それでも貴乃花との対戦成績は、優勝決定戦を含めて25勝25敗と五分だった」(大相撲担当記者)
曙さんと土俵上で数々の死闘を繰り広げてきた貴乃花の花田光司さんは「私たちは、猛々しく取組に励みました。(中略)これからは身を楽にして安らかに」と事務所を通じてコメントした。
そのほか、多くの相撲仲間が曙さんの早すぎる死を悼んでいる。いまはただ両手を合わすのみだ。合掌。
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