(画像)Lee Yiu Tung/Shutterstock
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魚の価格も爆上がり!? 「海面水温」上昇が引き起こす深刻な影響とは

日本近海の「海面水温」が、昨年6月から今年2月にかけて3季連続で過去最高を更新。3季連続は1982年の統計開始以降、初めてだという。


この気候変動による海洋環境の変化で、魚の分布や漁獲量に〝異変〟が起きている。


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「昨夏、静岡県の伊豆ではキハダマグロが定置網にかかったり、沖縄の県魚・グルクンまで水揚げされました。冬の仙台湾でも南方系の魚が珍しくなくなりましたからね。こうした〝異変〟の原因が、海水温の上昇だと考えられているのです」(漁業情報センター関係者)


昨年は国内外で記録的な高温が続いた。気象庁によると、日本近海の平均海面水温は平年と比べ昨年6〜8月が1度、9〜11月が1.2度、12月〜今年2月が1.1度も高くなっている。


「海水温が上昇すると、海中に溶け込む酸素の量が減るといわれています。海中の酸素が欠乏すると魚たちの生息環境にも影響があると考えられ、海水温の上昇が原因で魚たちの生息域が変化しているとみられています。例えば、サワラは温暖な海を好み、九州や瀬戸内海に多く生息していたんですが、今では北の海域で生息するようになっているんです」(漁業に詳しいライター)

フグの漁獲量で北海道が1位に

海水温の上昇は、漁獲量にも影響を及ぼしている。約10年で漁獲量が激減した魚は北海道・根室のサンマだ。2010年に4万7537トンだったのが、21年には1万480トン。また、岩手県内の秋サケも10年に1901トンだったものが、21年は413トンと大幅に減った。

「サンマやイカの漁獲量が減少している北海道では、以前は西日本や瀬戸内海が主な産地だったフグ類が22年に全国1位の漁獲量となり、福島県でもフグが大量に水揚げされている。『イカの街』函館市もイカに代わってブリの豊漁が続いているし、山陰地方や西日本に多かったマイワシも北太平洋に生息域を広げています」(前出・漁業情報センター関係者)


水産庁は、こうした海水温上昇による漁業の変化に対し、漁獲対策の見直し、養殖業への転換を後押しする予算措置や制度を検討しているが、遅々として進んでいない。


魚の価格高騰にも直結する漁獲量の減少は、物価高にあえぐ国民にとって、さらなる痛手となりそうだ。