蝶野正洋 (C)週刊実話Web 
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蝶野正洋『黒の履歴書』~自民党“過激ダンスショー”開催の是非

自民党の政治資金パーティー問題で、岸田文雄首相は関連した議員に対して厳重な処分を下すと表明した。


しかし、二階俊博元幹事長が次期衆院選の不出馬を表明したことで、処分の軽減や見送りが検討されるなど、身内びいきのブレも出てきている。


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こうした内向きの対応は国民の感情を無視しているし、ますます政治の不信感を招くだけ。すべてにおいて自分たちの感覚で進めていて、何が問題か分かっていないようにも感じるね。


この問題と同時期に、自民党の若手議員の懇親会で催された「過激ダンスショー」が話題となった。


セクシーな女性ダンサーが客席まで下りてきて参加者が口移しでチップを渡している動画が流出して、「今どき何をやっているんだ」という意見が殺到したようだ。


とはいえ、ダンサーの方々に悪意はないよね。そういうスタイルの踊りで、チップを胸や下着に挟むところまでがショーだから。出席していた議員も、巻き込まれただけだよ。


あくまでもパーティーの余興で、そこでどんなショーが行われても逃げようがない。それに、気が進まなかったとしても、場を盛り下げないようにチップを渡してしまう人がほとんどだと思う。


俺が新日本プロレスの若手だった頃、地方で昔ながらのストリップ劇場に繰り出したら、先輩の後藤(達俊)さんたちもいた。


昼間だったので席はガラガラで、俺たち若手は恥ずかしいから後ろのほうの席に座ったら、後藤さんから「かぶりつきに座れ!」と言われてね。


仕方なくみんなで最前列に詰めてショーを見ていたら、踊っていたお姉さんが後藤さんに向かって「ステージにいらっしゃい」と手招きして、さすがの後藤さんも恥ずかしくなったのか逃げていたよ。

アントニオ猪木のビンタもNG!?

ひと昔前は先輩に連れられて、男同士でそういう場所に行くのは普通だったけど、今はいろいろ問題があるだろうね。何が不快で、どこからがハラスメントになるのかも変化している。

そのうち、浅草でセクシーな衣装のダンサーがパレードを行う「サンバカーニバル」も、衣装が過激だといって駄目になるかもしれないな。


俺が呼ばれる地方のイベントとかで、地元のサークルの方々がフラダンスをよく披露してくれるけど、あれもセクシーで不快に感じるとクレームがついたら、ステージで行うことが難しくなる。


アントニオ猪木さんは、いろんなイベントに呼ばれてはお客さんをビンタしていた。闘魂注入を頼まれる「闘魂ビンタ」は、男女問わずにしていたよ。


今ならこれも「暴力的で怖い」と指摘されて、NGになっていたかもしれない。


ちょっと前までは当たり前だったことが、際どい行為になっていたりする。それがいつから駄目になったのか分からないまま過ごしていると、どんどん世間からズレてしまう。


自民党の議員たちも、裏金作りなんて当たり前と思ってやっているから罪の意識がないし、党の処分も甘くなる。過激パーティーも、このくらいは問題ないと思っている人がいたから催された。


今の時代、このズレが致命傷になる。だからこそ、自分の感覚が合っているのか常に確認するくらいの意識でいたほうがいいね。
蝶野正洋 1963年シアトル生まれ。1984年に新日本プロレスに入団。トップレスラーとして活躍し、2010年に退団。現在はリング以外にもテレビ、イベントなど、多方面で活躍。『ガキの使い大晦日スペシャル』では欠かせない存在。